■戦隊史上異例の大量死『百獣戦隊ガオレンジャー』ガオブルー、ガオブラック、ガオイエロー、ガオホワイト

 シリーズ第25作『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001~02年放送)は、前作『未来戦隊タイムレンジャー』がシリアスな作風だったのに対し、勢い重視の振り切った作風が特徴だった。

 しかし、第30話「満月が狼を殺す!」では衝撃的な展開が待っていた。敵幹部・ウラが千年の邪気を取り込み、究極体へと進化。圧倒的な力を得たウラに対し、「負けてたまるかーっ!」と立ち向かったガオブルーだったが、ウラに頭をワシづかみにされ強大なエネルギーを注ぎ込まれる。マスクは割れ、白煙の中に浮かぶガオブルーの見開いた目は生々しかった。それが静かに閉じられ、ガオブルーは絶命してしまう。

 そしてウラの高笑いが響いた後、画面には「つづく」の文字が。おまけに次回予告のタイトルは「百獣戦隊、全滅!!」。当時の子どもたちはいても立っても居られない状態だっただろう。

 しかし、やはり続く第31話でもショッキングな展開は止まらなかった。ガオブルーに続き、ガオブラック、ガオイエロー、ガオホワイトが次々と倒されていく。ガオレッドとガオシルバーがなんとかウラの猛威を逃れられたのは、不幸中の幸いだった。

 4人の遺体を前にガオの巫女・テトムは号泣し、ガオレッドも「どうしようもないんだ……俺たちは、オルグに負けちまったんだよ!」と地面に大の字になってしまう。戦隊シリーズにおいても、立て続けに4人ものメンバーが死亡するというのは極めて異例の展開だ。

 その後もウラの猛攻は続く。しかし、ここからさらなる驚きが待っているのが『ガオレンジャー』だ。追い込まれるガオレッドとガオシルバーのピンチに、死んだはずの4人の仲間たちの意志が届く。その後マスオさんの声でおなじみ、増岡弘さんの「奇跡が起こりました!」のナレーションとともに、なんと4人は奇跡の復活を果たすのだった。そして、その勢いのままウラを「邪気退散!」と打ち倒してしまう。

 あまりにも勢い重視の豪快な展開ではあるが、『ガオレンジャー』らしい死亡&復活劇として、今なお語り継がれている。

 

 スーパー戦隊シリーズにおける「死亡シーン」は、単なる悲劇ではなく、キャラクターの生き様や作品の個性を映し出す重要な要素だ。

 『鳥人戦隊ジェットマン』の凱は、トレンディドラマのように命を落とし、『未来戦隊タイムレンジャー』の滝沢直人は、皮肉な最期を迎えた。『百獣戦隊ガオレンジャー』では異例の「メンバー4人死亡」が描かれたが、そこからの奇跡的な復活が印象的だった。悲劇、感動、そして希望。これらのシーンは、これからもファンの心に深く刻まれ続けるだろう。

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