■実際の試合は?
では、実際の試合展開はどのようなものだったのだろうか。
まず、センター対決は赤木vs魚住。作中の去年の試合を分析する木暮が「魚住にとっちゃあ、あんなに抑えられたのは生まれて初めてだろうからな…」と発言していることからも、赤木が魚住を圧倒していたことが分かっている。
続いてガード陣。1年ながら安定感のある越野&植草。対する宮城も1年ながらスピードに優れる選手だ。このマッチアップは比較的拮抗していたのではないだろうか。ただし、木暮はそこまで活躍していなかったと思っている。なぜなら、全国を決める試合で田岡監督が木暮を侮っていたという事実があるからだ(それがダメ押しの3Pを許してしまうのだが……)。木暮が田岡監督の前で一度でも大活躍している姿を見せていたならば、そんな采配はしなかったはずだ。
最後に問題のフォワード対決だ。まず当時の湘北の3年生たちは、赤木が全国を目指すことを煙たがるほどバスケに本気ではなかった。また流川と桜木の加入で、木暮が「赤木・流川・桜木の最強のフロントラインができる!」と興奮気味に話すシーンがある。これは裏を返せば、これまでの湘北のウィークポイントがフロントラインだったことが推察できる。
そんな湘北の3年生2人が、陵南1年の天才・仙道を目の当たりにしたら……早々に戦意喪失していても不思議ではない。湘北攻撃時は宮城が懸命に赤木にボールを集めても、フォワード陣のフォローはなく、逆に陵南攻撃時は、仙道がほぼノープレッシャーでシュートを放つ。赤木が魚住と争いながら懸命にゴール下で待ち構えるも、そんな仙道のシュートは、そもそもこぼれること自体が少なかったことだろう。その結果が、仙道ひとりで47点を獲得、陵南の100点ゲームだったと考えている。
実力拮抗するNBAなどの試合でも、大差のつく試合は多々ある。その理由の一つとして「スター選手の爆発」と「メンタル面での崩壊」が挙げられる。湘北にとって、仙道という1年生のスター選手の登場は想定外だった。その圧倒的な実力に度肝を抜かれ、特にやる気のなかった当時の湘北3年生は早々に戦意を喪失、試合を投げてしまったのだろう。
あくまで、いちファンである筆者の考察だが、孤軍奮闘した赤木の悔しい気持ちが伝わって来るようだった。メンバーがそろった「今年の」湘北に赤木はどんなに喜び興奮したことだろう。それを踏まえて、もう一度原作を読み返してみようと思う。