■意外な結末に驚いた!『ひるなかの流星』獅子尾五月

 2011年から『マーガレット』(集英社)で連載されていた『ひるなかの流星』は、やまもり三香氏による作品だ。

 田舎で育った主人公・与謝野すずめは、ひょんなことから東京で暮らすことに。居候先である叔父・諭吉の家が分からず途方に暮れ、倒れてしまったところを獅子尾五月に助けられる。

 後に獅子尾は自分が転入するクラスの担任であることが判明。面倒見が良く人望も厚い上、すずめのことを特別気にかけてくれる獅子尾に、すずめは少しずつ惹かれていった。

 まっすぐな性格のすずめに獅子尾も惹かれているものの、教師と生徒という関係からなかなか前に進めない。現実ではありえない「教師との恋愛」を王道で楽しめるのが本作の見どころだろう。

 本作のもう1つの見どころは、クラスメイトの馬村大輝との恋愛模様だ。馬村が女性が苦手という秘密をすずめが知ってしまったことから、2人は良き友人になっていく。

 やがて馬村は、すずめに恋心を抱くようになり、彼女が獅子尾に惹かれていると知っていてもアプローチしていくのだった。

 馬村のあまりに一途な姿に、2人の男性の間で揺れ動くすずめ。彼女がどちらを選ぶのか、最後の最後まで分からなかった。

 ファンの中でも「先生派」と「馬村派」に意見が分かれ、3人の恋の結末を見守っていたのだが、すずめが最終的に選んだのは同級生の馬村だった。

 物語の序盤から、獅子尾はヒーローですずめは獅子尾のことが大好きだった。そして獅子尾もまたすずめを想っていたのは明らかなので、当然2人が結ばれると思っていた読者はこの結末に驚いただろう。

 しかし馬村のすずめを想う気持ちは、涙が出てしまうほど一途で切ないものだった。獅子尾を想うすずめを振り向かせたいと必死な馬村。彼の男気にキュンときたのは筆者だけではないはずだ。

 獅子尾と馬村、そしてすずめのそれぞれの心情がていねいに描かれている本作。三角関係のハラハラドキドキを楽しめる名作だ。

 

 ヒロインはヒーローと結ばれるものというセオリーを覆した作品たち。こうして振り返ってみると、ヒロインと結ばれたサブキャラたちはいずれも魅力的だ。

 ヒーローと結ばれてほしかった作品もあるが、「もしこうなっていたら」と想像しながら楽しめるのもまた、少女漫画の醍醐味ではないだろうか。

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