
漫画やアニメのキャラクターの言動がネットミームとして使用されるのは、その作品が人気である証拠ともいえる。中でも冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』は、ネットミームになることが特に多い作品だ。
「オレでなきゃ見逃しちゃうね」、「クセになってんだ 音殺して動くの」など、本作を知らなくても聞いたことのある言葉も少なくないはずだ。そんなネットミームの数々の元ネタがどんなシーンで登場し、どんな場面で使えるのかを紹介していこう。
■「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」
『HUNTER×HUNTER』で特に有名なネットミームと言えば、ヨークシン編で登場した殺し屋が発したセリフだ。
最強最悪の盗賊集団「幻影旅団」。マフィアたちは、地下競売の商品を狙いに来た彼らを抹殺するため、腕利きの殺し屋たちを集めていた。
このセリフは、殺し屋のひとりが、旅団の団長であるクロロ=ルシルフルが映った防犯カメラ映像を見た時に発したものだ。クロロはノストラードファミリー組長の娘であるネオン=ノストラードを超高速の手刀で気絶させ、彼女の介抱を理由にまんまと厳戒態勢のビルへの潜入に成功した。それを看破した殺し屋は笑みを浮かべながら、モノローグで語る。
「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」
この殺し屋の余裕たっぷりの態度。しかし、この殺し屋が強烈な印象を残したのは、その後、クロロにあっさりと倒されるザコキャラだったからでもある。さも超一流の殺し屋かのようにクロロを批評していたことが、ネタ的に扱われているのだ。
ネット上では、自分しか気が付かないような事実を見つけた時などに多用される表現だ。「オレでなきゃ見逃しちゃうね」のみの場合も多いので、こうした書き込みを見つけると、思わず「あの殺し屋のセリフ!!」とテンションが上がってしまう。
■「クセになってんだ 音殺して動くの」
『HUNTER×HUNTER』のネットミームを数多く生み出しているのが、キルア=ゾルディックだ。キルアは伝説の暗殺一家「ゾルディック家」で育ち、幼少期から殺し屋として過酷なトレーニングを受けている。
このセリフはクラピカの復讐の相手である幻影旅団との戦いに備え、偵察をするシーンで登場する。キルアのもとに協力者として送られてきたのが、どんな小さな音でも聞こえるセンリツ。彼女は初対面のキルアに対し、「あなた… まさか殺し屋さん?」とすぐに問いかける。彼の足音がほとんど聞こえなかったからだ。
「こんなに近くにいてもestinto(エスティント)だから」とセンリツは話す。estinto(エスティント)というのは「きわめて小さな音」をあらわす音楽用語。これに対して、キルアはあの有名なセリフを返す。
「ああ… クセになってんだ 音殺して動くの」
これはキルアの過酷な生育環境が分かる言葉であると同時に、多くの「中二病」の若者を生み出したキルアのキャラクター性が詰まった名セリフでもある。
ネットミームとしては「クセになってんだ ○○するの」と後半の部分を変えて書き込むことも多く、使い勝手のいいセリフとしても多用されている。