■渚の5年越しの卒業『CLANNAD〜AFTER STORY〜』

 人気恋愛アドベンチャーゲームを原作とするアニメ『CLANNAD』。その第2期『CLANNAD〜AFTER STORY〜』では、岡崎朋也と古河渚の関係が描かれ、そこには二人の卒業シーンもあった。

 病弱な渚は高校3年を一度留年し、さらに長期欠席により再び留年することに。そして第9話「坂道の途中」では、朋也が一足先に卒業を迎える。朋也の最後の制服姿を見たいと、体調がすぐれない状態にもかかわらず、家の前で彼の帰りを待つ渚のけなげな姿が印象的だった。

 そこから1年、渚は懸命に学校へ通い、卒業に必要な出席日数を確保する。しかし、3学期に再び体調を崩し、第13話「卒業」では卒業式に出席できず、彼女は自宅の窓から校舎を眺めることしかできなかった。朋也と渚にとって、心残りのある卒業式となったことだろう。

 やがて春が訪れ体調が回復した渚は、結婚した朋也に誘われ桜並木を抜けて学校へ向かう。するとそこには、かつてのクラスメイトや演劇部の仲間たちが待っており、渚のための卒業式を開いてくれるのだった。

 桜舞い散る校門で卒業証書を受け取る渚。5年越しの卒業は、彼女にとっていかに険しく、尊いものであったのか。「大好きな学校です。頑張れた私が過ごした場所だからです」と涙ながらに語るその姿は、彼女の歩んできた道のりの重みを感じさせる。泣けるアニメを多数生み出してきた京アニ。渚の卒業式は、感動的なエピソードの多い同作の中でも特に心を打つ、京アニならではの名シーンのひとつとなった。

 『けいおん!』では、軽音部の5人が紡いできた青春の日々が、卒業式という別れの中でも温かく明るい雰囲気で締めくくられ、『響け!ユーフォニアム』では、音楽を通じた絆の深さが描かれた。そして『CLANNAD』では、ヒロイン・渚が5年越しに卒業を迎え、それを支える仲間や家族の温かさが心を打つ。

 それぞれの作品が、旅立ちの切なさだけでなく、未来へ向かう力強さや、仲間との絆を描き出しているのが印象的だ。京アニ作品が描く卒業式は、単なる節目ではなく、それぞれのキャラクターが積み重ねてきた時間や想いが凝縮されている。ファンにとっても特別なエピソードばかりだろう。

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