■可変機体のなかでも屈指の無駄がない変形機構「アッシマー」

 続いては円盤型のMA形態が異質さを放つ「アッシマー」の変形シークエンスについて、第13話「シャトル発進」を参考に紹介していこう。

 上空からの射撃を回避するように上昇した、クワトロ・バジーナのMS「百式」の眼前を並走するアッシマー。その直後に一瞬でMS形態へと変形しクワトロを驚かせるのだが、このシーンをスローで見てみると、アッシマーの変形機構の無駄のなさにあらためて感心させられてしまう。

 まず、MA時のスラスターを担っていた脚部が、折りたたみを解くようにニョキッと展開。同時に展開した円盤部分は、“気をつけ”の姿勢で収まっていた両腕の装甲、肩部の装甲、90度横を向いた頭部の装甲、さらに別シーンで確認できる折りたたまれたバックパックが、パズルのようにぴったりとハマることで、綺麗な円盤の形状になっていたことがわかるのである。

 円盤型にすることで空気抵抗を減らし、高速の空中戦闘を実現。さらに百式の射撃をものともしない分厚い装甲を持ち合わせていることからエゥーゴの面々をしばらく苦しめたが、最終的には第16話にて作中最強のパイロットと称されるアムロ・レイの前に撃沈した。

 アムロの規格外の活躍と、ブランの「アッシマーがぁぁッ!!」という最後の台詞も相まってかませ犬的な役回りになってしまった機体だが、その計算されつくした変形機構は、『Z』においてほかに類を見ない華麗さでファンを魅了してくれた。

■変形するだけで街並みを一変させる悪魔「サイコ・ガンダム」

 最後にティターンズの巨大可変機体「サイコ・ガンダム」について、第17話「ホンコン・シティ」での変形シーンを参考に紹介していこう。

 ホンコン・シティに突如飛来したサイコ・ガンダムは、巨大な要塞のような見た目をした「モビルフォートレス」と呼ばれる形態で不気味に市街に侵入し、カミーユのガンダムMk-IIと交戦。正面からの攻撃にひるむことなくカミーユに接近しながら、ゆっくりと変形を開始するのだ。

 装甲の内部に収まっていた巨大な手のひらがあらわになると、フレームの複雑な構造を内側に覗かせながら装甲が移動し、脚部を展開。両サイドに備えていた翼を合体させ巨大な盾とし、頭部の装甲が移動してMS形態への変形が完了する。この直後にガンダムMk-IIを見つけて妖しく目を光らせる描写は、まさに恐怖そのものである。

 変形シークエンス事態に複雑さはさほどないが、両腕の展開時には左右に立ち並ぶビルを破壊し、脚が地に着いただけで地面を激しく削るなど、その巨体さゆえに変形一つで周囲の街並みを激しく破壊してしまう派手さこそ、サイコ・ガンダムの変形シーンの魅力だ。

 かつてアムロが搭乗したガンダムは“白い悪魔”と呼ばれたが、モビルフォートレスの不気味さと圧倒的な破壊力を持つサイコ・ガンダムもまた、十分に悪魔的に見えてしまう。

 

 老若男女問わずメカ好きにとっては、機体によって異なる様子を見せる「変形」というロボットアニメ特有の演出からしか得られない栄養があるというもの。

 とくに長い歴史を持つ『ガンダム』シリーズにおいては、各時代の製作陣たちがさまざまな趣向を凝らしたであろう、そのしびれる描写にも目を奪われてしまう。

 『機動戦士Zガンダム』が40年前の作品であるということを踏まえ、あらためて「変形」のように少々マニアックな要素に触れながら各シーンを見返してみるのも、新鮮な発見があってまた面白いかもしれない。

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