
『機動戦士ガンダム』から登場する宇宙世紀シリーズ屈指の人気キャラ「シャア・アズナブル」。高いカリスマ性を持ち、自身の復讐を成し遂げる実力と行動力を兼ね備えた優秀な人物である。
だが、そんな傑物にもかかわらず、なぜか周囲の人間からヒドイ暴言を投げかけられる場面が多い。パプテマス・シロッコには「ニュータイプのなりそこない」と評され、部下であるギュネイ・ガスにまで“女性の趣味”を揶揄されたほど。
あまりに辛辣な言葉をぶつけられすぎて、視聴者側がかわいそうに感じてしまうほどである。そんなシャアに対するヒドすぎる発言の数々を振り返ってみたい。
※本記事は各作品の内容を含みます。
■宿命のライバルが放った残酷なセリフ
ある意味、シャアのことを一番よく知っている人物であり、因縁深い存在だったのがアムロ・レイだ。敵として対峙する機会も多かったため、当然シャアに対して厳しい言葉を投げかける立場でもある。
しかし、敵としてのシャアではなく、味方として同じ陣営にいたときに発したアムロの言葉がどうしても忘れられない。
それは『機動戦士Zガンダム』第37話「ダカールの日」のエピソード内でのこと。この回では偽名のクワトロ・バジーナではなく、ジオンの遺志を継ぐ者「キャスバル・レム・ダイクン」として議会で演説を行った。
それはシャアにとって、本名を明かして重責を担うことを意味する。名演説だったと称賛するエゥーゴやカラバの関係者から離れ、ひとりで浮かない表情を浮かべるシャア。そこにアムロがそっと近づく。
アムロに対して「これで私は自由を失った……」と本音を漏らすシャア。するとアムロは「そういうことか」と共感しながらも、「こんな大仕事にひとりやふたりの人身御供はいるよ」と告げる。
思わずシャアが「私は人身御供か」と自虐すると、続けざまにアムロは「人身御供の家系かもな」と皮肉めいた言葉を言い放つのだった。
字面だけ見ると、シャアの生まれまで揶揄する相当辛辣な言葉にも見え、これまでシャアが苦悩してきた人生を軽んじているようにも受け取れる。
だが、そのアムロの言葉をシャアは不快に感じている様子はなく、まるで古くからの友人であるかのように、ふたりで酒を酌み交わす姿が印象的だった。実際シャアに面と向かってこんなことを直接言えるのは、アムロくらいのものだろう。
■無自覚な若者の言葉が刺さる?
『機動戦士Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンは、クワトロ・バジーナを名乗るシャアにとっては部下であり戦友であり、導くべき若者でもあった。
そんなカミーユが、シャアに対して無自覚にヒドイことを言ったシーンが第5話にある。両親を殺され、やけになって荒れているカミーユに対し、クワトロは「シャア・アズナブルという人のことを知っているかな」と唐突に切り出す。
この段階ではシャアとクワトロが同一人物だと知らないカミーユは、「(シャアのことを)尊敬してますよ。あの人は両親の苦労を一身に背負ってザビ家を倒そうとした人ですから」とリスペクトを口にする。
しかし、続けざまに「でも組織にひとりで対抗しようとして敗れた、馬鹿な人です」とぶちまけたのである。
このカミーユの発言についてクワトロは「正確な評論だな」と涼しい顔をしていたが、身も蓋もない暴言を当人の目の前で披露したシーンは強烈なインパクトがあった。
ちなみに第13話では、偽名で名を隠し、シャアであることをかたくなに認めないクワトロに、カミーユは「もしそうなら、それは卑怯ですよ。シャア・アズナブル、名乗ったほうがスッキリします」と詰め寄る。それでも認めなかったことにカミーユはぶちギレて、クワトロの顔面を思いきりぶん殴るシーンもあった。