■コズミック・イラの時代で猛威を振るう菊一文字
太刀で言うならば『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』に登場する「ガンダムアストレイ レッドフレーム」も外せない機体だ。
ロウ・ギュール搭乗のレッドフレームのメイン武装といっても過言ではないのが、巨大な日本刀「ガーベラ・ストレート」である。
装甲の堅牢さより運動性能を優先させているレッドフレームだが、搭載されているビーム兵器はエネルギー消費も激しく、機体の性能を活かしきれない点が懸念点であった。そこで、低燃費かつ高性能な実体剣であるガーベラ・ストレートを廃棄コロニーから入手し、剣豪ウン・ノウから習得した剣術をレッドフレームのOSに組み込むことで、機体性能とガーベラ・ストレートの強みを最大限活かすことに成功したのである。
ビームすら切り裂くことができるうえ、日本刀として正しく扱えば無二の切れ味を発揮するガーベラ・ストレート。漫画『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R』においてはMS・ジンを縦に一刀両断し、模型企画によるショートアニメに登場した際は突進してくるジンの支援機・グゥルを真っ二つにしている。
エネルギー消費もなく、あくまでもその切れ味をもって敵機を両断できる点や、ビームに対する防御性能を備えている点を鑑みると、数ある『ガンダム』シリーズのなかでもガーベラ・ストレートこそ最強クラスの実体剣といっても過言ではないだろう。
■不惜身命を掲げた武人の一突き
実体剣を用いた印象的なシーンとしておまけ的に挙げておきたいのが、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で描かれたグフカスタムの戦闘シーンである。
グフカスタムを駆るノリス・パッカードが、巡洋艦・ケルゲレンの脱出ルートを確保するために単身で陸戦型ガンダム3機と量産型ガンタンク3機が配置された戦場に挑む名シーン。長距離砲撃が可能なガンタンク3機をおもな撃破目標に据えると、ノリスの老獪な戦術で08小隊の面々を翻弄していくのである。
そんな戦闘のなか、カレン・ジョシュワが守るガンタンクに不意打ちで飛び乗ると、その手に携えたヒート・サーベルをガンタンクに突き刺し、あっという間に戦闘不能にする。突き刺す瞬間には刃がギラリと光り、直後には返り血の如く何らかのオイルを浴びるグフカスタム。
MS同士の戦闘描写でありながらも、まるで侍が天誅を下すかのような生々しさを演出したこのシーン。ビームサーベルの閃光が機体を貫くのではなく、ヒート・サーベルという実体の刃だったからこそ、リアルな“斬殺”とも呼べる残酷な描写を演出できたのではないだろうか。
『オルフェンズ』以外のシリーズにおいては、「ビーム兵器を使えば良いのでは?」と思ってしまうシーンがあることは否めないが、特定の機体に有効であることやコストの問題など、実体剣を使用する理由はさまざまある。
ビーム兵器による近未来的な描写も良いが、巨大なMSたちが激しく金属音を鳴らしながら命を削り合う実体剣ならではの描写もまた、ロマンのひとつだと言えるだろう。