結局、仲直りできたの? 現実味がありすぎたNHK教育番組『さわやか3組』の「モヤモヤしたエピソード」の画像
『あの日の教室~さわやか3組-NHK子ども番組テーマ集』(Solid Records)

 みなさんは1987年から2008年にかけて放送された、NHK教育テレビジョン(現・Eテレ)の番組『さわやか3組』を覚えているだろうか? 

 本作は小学校中学年向けの道徳番組で、全国の学校から来たお便りなどをもとに制作されている。さまざまなエピソードが展開されたが、おもに3組の教室で起きるトラブルを生徒たちがどう解決するかが見どころだった。当時、子どもの頃に見ていた人も多く、自分が3組であれば、“自分のクラスでも撮影してほしい”と思った人もいただろう。

 しかしそんな『さわやか3組』だが、すべてのエピソードが爽やかに終わるわけではない。なかには「えっ、これで終わっちゃうの!?」と、モヤモヤしてしまうような終わり方もあったのだ。
 今回は視聴者に小さなひっかかりを残したエピソードをいくつか紹介したい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■仲直りしたけどまさかの転校「てつぼうヒーロー」

 「てつぼうヒーロー」は『さわやか3組』2002年度銚子編で放送された話である。
 体育の授業でうまく鉄棒ができないアキラ。一方、ユウジは連続で逆上がりを成功させ、周囲からちやほやされる。その様子を見たアキラは「鉄棒ヒーローかよ……」と、苛立ちを募らせていた。

 そんななか、ユウジは逆上がりができないアキラに対し、ポイントをまとめた紙を渡して「鉄棒もできれば楽しいよ」と誘うが、アキラはその手紙を放り投げてしまう。しかしその後、アキラはユウジの手紙を見ながら鉄棒に挑戦し、ついに逆上がりに成功するのだった。

 自分のために手紙を書いてくれたユウジにお礼を伝えようと近づくと、ちょうどユウジが先生と話しており、“来月には転校する”という話を耳にする。その言葉をこっそり聞いてしまったアキラは自分の態度を反省し、ユウジと和解。その後、二人は一緒に鉄棒をしたり、肩を組んで歌ったりしながら、物語は幕を閉じるのであった。

 このエピソードでアキラとユウジは仲直りできたものの、ユウジがすぐに転校してしまうのが切ない。「本当に鉄棒がうまいな」と褒めるアキラに対し、“僕はいつもあちこち転校しているから。どの学校にも鉄棒はあるから、友達を作るきっかけに練習したんだ”と語っているのも、なんだか心がギュッとなってしまう。

 また、ストーリーの中盤には音楽の時間に二人がちょっと仲違いをする場面もあり、関係が悪いシーンのほうが目立っていた印象だ。それだけに、仲直りしたあとの二人の時間があまりにも短く感じられ、もう少し交流の場面があっても良かったのではないかとモヤモヤとしてしまった。

■結局謝れたのかどうか分からないオチ「パレットのゆくえ」

 「パレットのゆくえ」は、2001年足利編で放送された話である。

 図工室で絵具を使おうとパレットに手を伸ばしたリサ。すると隣にいたシンヤもそのパレットを使おうとし、お互いに「これは自分のものだ」とけんかになる。最終的にそのパレットはリサが取り上げて自分のものにしてしまった。

 しかしその後、リサの机の中から本来の自分のパレットが見つかり、自分の勘違いだったと分かる。リサは音楽の時間でもそのことが頭から離れず、元気に歌うことができない。

 その後、リサはシンヤから取り上げたパレットをこっそり返すため、先生やほかの生徒の目をごまかしながらシンヤの机の中にパレットを入れる。しかしそのタイミングでシンヤたちクラスメイトが教室に入ってきた。慌てたリサは机を倒してしまい、パレットが床に落ちる。

 シンヤはすべてを悟ったようだが、リサを責めることなく「よかった、あって」と一言。それを聞いたクラスメイトたちは、“なんだよ、やっぱりシンヤが失くしたのか”と、からかう。それを聞いたリサは「違うの!」と言うのだが、みんなに見られると小さくなりうつむいてしまった。

 その後、突如シーンは音楽の時間に変わり、リサが元気良く歌うシーンで物語は終了する。

 リサが自分の持ち物だと勘違いし、強引にパレットを奪ってしまったこのエピソード。リサは反省するも、シンヤに謝る肝心のシーンは放送されていない。はたしてリサはしっかり謝ることができたのか、それともシンヤは濡れ衣を被ったままなのか、なんともモヤモヤする終わり方である。

 思えば『さわやか3組』はこのように肝心のオチが放送されることなく、“結末は自分で考えて”と言わんばかりのエピソードも多かった。クラスメイトの持ち物を誤って取ってしまったときにどう行動すべきか、また逆の立場だったら? 当時視聴していた子どもたちは、きっと自分に置き換えて考えたことだろう。

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