■無様に命乞いまでしたシコルスキー

 最後は死刑囚のひとりであるシコルスキーだ。シコルスキーは、ロシアの英雄と呼ばれたアレクサンダー・ガーレンを簡単に倒してしまうほどの実力者。日本に来てからも、世界一の柔道家・舘岡やプロレスラーの猪狩完至を瞬殺してしまう。

 そこからも、死刑囚の強さは並の格闘家と比べ物にならない……そう思ってしまった。しかし、残念ながらシコルスキーの活躍はそこまでだ。

 松本梢江を誘拐したことで刃牙にボコボコにされ、ビスケット・オリバの一撃で気絶。そのまま警察に連れて行かれた。その後、脱走するもジャック・ハンマーによってボコボコにされまたもや気絶。今度は地下闘技場へ連れて行かれ、紆余曲折のすえガイアと戦うことになる。

 ここまで良いところがまるでなかったので、ガイアとの戦いでついにシコルスキーの見せ場がくるのか?と思われたが、まさかの展開となった。

 ガイアは砂を自らの体に付着させて擬態し、姿を隠して一定の間隔でシコルスキーに攻撃を加える。シコルスキーは見えないから攻撃を防ぐことができない。そのため、確実に食らうと分かっている攻撃を待つことになる……。これに耐えられなくなったシコルスキーは、ついには「オレの負けだッ〜~~許してくれェェッ〜~~」と叫んでしまった。

 他の死刑囚は実力差を感じても最後まで屈することはなかったのに、シコルスキーだけが無様な命乞いをしている。最初はそこそこの強者感を出していたからこそ、最後の情けない負けっぷりが余計に引き立っている……。

 

 『刃牙』シリーズには、噛ませ犬キャラが多い。今回紹介しきれなかったが、金的にデコピン一発でやられてしまったサムワン海王もそのひとりである。

 彼らのある意味鮮やかな負けっぷりも、本作の見どころのひとつといえるだろう。

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