■あくまで冷静に確実に…『鈴木先生』の鈴木先生

 『鈴木先生』は武富健治さんによる漫画であり、2011年に長谷川博己さん主演でテレビ東京にてドラマ化された。劇場版も2013年に公開されるなど、大きな話題を呼んだ作品である。

 この作品での先生の「ハチャメチャ」っぷりは、先に紹介したふたりとはかなり毛色が異なる。鈴木先生は2年A組の担任で、担当科目は国語のいたって普通の教師だ。しかしその実、自分の教え子に恋愛感情に似た感情を抱き、彼女と恋人との間で葛藤するという激ヤバな一面を隠しているのだった。

 鬼塚や殺せんせーと一線を画している鈴木先生の問題解決法とは、「鈴木式教育メソッド」だ。あくまでも問題を大きくせず、冷静に確実に問題解決まで導くのが彼のやり方である。問題が起こると鈴木先生の思考回路がフル回転して、その葛藤が饒舌なモノローグとともに明かされていくのも面白い演出だった。

 たとえば、第2話では給食中に問題行動を起こす出水正という男子生徒の問題について、「このことについては、みんながそれぞれの胸の内で思考を熟成させてほしいんだ」と生徒たち自身の判断に任せてしまう。正面からの解決ではなく、衝突を生む事態を避けつつ生徒自身の成長を促すという、従来の熱血教師とは一線を画す選択をするのである。

 その後もさまざまな問題が発生するが、毎回状況を分析してどうにか乗り切っていく姿がスリリングかつ痛快だった。

 時には自己保身もあり、時には教師としての葛藤もある鈴木先生の姿には、どこかリアリティーすら感じてしまう。さまざまな問題に対して論理的かつ常識外れの方法で対処し、鬼塚たちとはまたちがう“ぶっ飛んだ”活躍を見せる姿が斬新だった。

 

 型破りな教師というのは、ある意味では王道のキャラ造形の一つだ。彼らが生徒たちの問題をどんな形で解決していくのか、そのハチャメチャっぷりから目が離せない。

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