■『シン・ゴジラ』『さくらん』などへの出演
庵野さんの監督作品『シン・ゴジラ』には、多くの芸能関係者がカメオ出演している。そんなキャストの中に、監督本人も含まれている。 彼は映画序盤にバスの運転手として出演しているのだが、後ろ姿のみであるために、エンドロールで出演の事実を知ることとなる。
ゴジラや逃げ惑う人たちの臨場感に圧倒されて、仮に後ろ姿でなくても見逃してしまうだろう、一瞬の出演だった。
余談だが、庵野さんに限らず、ほかのカメオ出演者たちもこうした一瞬の出演が多く、どこに出ているかを探すのも『シン・ゴジラ』の楽しみ方のひとつとなっている。
そして、自身の作品にとどまらず、妻である安野モヨコさん原作の映画『さくらん』にも、庵野さんは登場している。花魁の物語を圧倒的な映像美で表現し、第31回日本アカデミー賞で優秀音楽賞・優秀美術賞をダブル受賞した作品だ。
庵野さんが演じたのは玉菊屋の客であり、宴会の場面で酒を飲んでいる姿が映っている。ちゃんと見ていないと庵野さんだと分からないほど人が多い場面だが、侍のような姿で酒を楽しむ様子が確認できる。
■実は大学時代から演技に挑戦していた
最後に、庵野さんの大学時代の作品を紹介しよう。実は、庵野さんは1980年に自主製作映画『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』を作り、主演も務めている。こちらは学生時代の作品であるものの、現在でもAmazonプライムビデオで観ることができる。
制作陣として参加したアニメプロデューサー・赤井孝美さんは「スゴくマジメに作って。『最後に庵野くんが出てきたら大爆笑やろ』って気楽な感じで作った」と語っている。怪獣などの完成度はかなり高く、それだけに庵野さんがジャージを銀色に塗っただけのウルトラマン姿で登場するというギャップに、思わず吹き出してしまう。
ほかにも、夫婦共演となった松尾スズキ監督の『恋の門』や、独特な世界観の怪獣映画『デスガッパ』など、「俳優・庵野秀明」が楽しめる作品はまだまだある。アニメや映画で監督を務めるだけでなく、自身の表現活動を俳優業にも広げてきた庵野さん。庵野さんの意外な一面を知ることで、彼が生み出す作品についての理解もより深まるかもしれない。