
『新世紀エヴァンゲリオン』に『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』……と数々の人気作を生み出してきた庵野秀明さん。彼は多くのアニメ作品を手掛けながらキャリアを築き、いまでは世界中のアニメファンに知られる存在になった。
そんな庵野さんは、実は実写作品やアニメ作品に、“演者”として出演する機会が多い監督でもある。中でも特に話題になったのは、恩師でもある宮崎駿さん監督作品『風立ちぬ』で、 主人公・堀越二郎役の声優に起用されたことだろう。
そのほかにも庵野さんが俳優として出演した作品はまだまだある。今回は、庵野さんが過去に見せた名演技・名シーンを振り返ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『ラストレター』と『イチケイのカラス』では本格的な演技を披露
まずは、巨匠・岩井俊二監督の『ラストレター』。松たか子さん、福山雅治さん、広瀬すずさんなど超豪華なキャスト陣が集結した作品だ。本作で庵野さんは、松さん演じる岸辺野裕里の夫・宗二郎を演じている。マイペースな漫画家という、どこか本業にも通じる役柄だった。
宗二郎は妻とコミカルなやり取りをしたり、その自由な行動を容認したりしながらも、彼女の浮気を疑う繊細さを持っているキャラだ。「君は?」「初恋の人、会えました?」と核心を突くような質問をするなど、その表情と独特の演技は庵野さんの雰囲気にピッタリと合っている。
裕里役の松さんが「いい意味で異物感があり、すごく面白い」と完成披露試写会で語った通り、やや不気味な雰囲気もあり、まさに異質の存在だった。
そのほか、月9ドラマ『イチケイのカラス』(フジテレビ系)の劇場版では、裁判長役で登場。友情出演という形で、豪華キャストの向井理さん、斎藤工さんらとともに作品を彩った。
庵野さんが登場するのは映画の冒頭。黒木華さん演じる坂間千鶴が地方の裁判所で奮闘している場面だ。彼が演じる裁判長はやる気がまるで感じられず、裁判中に居眠りをするなど、都会の裁判所とのギャップを象徴するかのようなキャラだった。かなりコミカルなシーンで、庵野さんのキャラも生かされた、思わずクスリとしてしまう演技だった。
■『あぶない刑事』への出演
庵野さんの意外な出演作としては、『あぶない刑事』(日本テレビ系)がある。『あぶない刑事』といえば、舘ひろしさん、柴田恭兵さん主演の伝説的な刑事ドラマだが、庵野さんが本作に俳優として出演していたことはあまり知られていないかもしれない。
出演したのは、1998年公開の劇場版『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』。本作は劇場版シリーズの第5作目で、庵野さんが演じたのはいかにも怪しい男だ。
その登場シーンは、映画の中盤、仲村トオルさん演じる町田透が銃の調達のため、犯罪者になんやかんやと理由をつけて銃を持ってこさせる場面。
そのとき最初に銃を持ってくるのが、庵野さんが演じる不審な男。サングラスにガラの悪そうなシャツを着た彼が、おそるおそる銃を持ってくるというシーンで、やはりどこかコミカル。きょろきょろ辺りを見回しながら指定場所に銃を置き、何でもない風を装いポケットに手を突っ込んでからあわてて去っていく様子がおかしい。
すでに監督として成功していた時期なだけに、当時「いまの庵野監督だったよな?」と驚いたファンも多かったのではないだろうか。