「ぜひとも見てみたかった…」映画『スラムダンク』で描かれなかった原作漫画「ファン胸アツの重要シーン」  大根かつらむきに花道の告白も…の画像
『THE FIRST SLAM DUNK』(C)I.T.PLANNING,INC.(C)2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

 2022年公開の『THE FIRST SLAM DUNK』は、日本のみならずアジア圏でも絶賛された映画だ。原作の最後の試合「湘北VS山王工業」を宮城リョータを主軸に描き、原作とは一味違った作品へと昇華させている。

 本作では、監督と脚本を原作者の井上雄彦氏が担当していることもあって、原作にはなかった宮城の過去が追加された。しかしその一方、原作にあった名シーンの数々もカットされてしまっている。

 原作を長らく愛してきたファンの中には、「あのシーンがないなんて……」と感じてしまった人もいるかもしれない。そこで今回は、映画でぜひとも見たかった原作漫画の名シーンを振り返ろう。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

■ライバルを激励!魚住のかつらむきシーン

 まずは、原作28巻で登場する「魚住のかつらむきシーン」だ。山王戦では、「ゴリ」こと赤木剛憲が高校バスケ界最強センターである河田雅史とマッチアップする。しかし、赤木は手も足も出ず、次第に自分のプレイを見失っていってしまう。

 湘北の精神的な支柱でもある赤木の不調は、チーム全体に影響を与えていた。そこに現れたのが、赤木のライバル・陵南の魚住純だ。観戦していた魚住は突如、板前の格好をしてコートに現れ、試合中にもかかわらず大根のかつらむきをし始める。まさに驚愕のシーンだ。

 その後、警備員から退場を促されながらも「華麗な技を持つ河田は鯛…」「お前に華麗なんて言葉が似合うと思うか 赤木」と、赤木に語りかける魚住。そして最後に、「お前は鰈(かれい)だ 泥にまみれろよ」という言葉で締めくくる。

 この言葉によって赤木は本来の自分を取り戻す。そして、「河田は河田 オレはオレだ」「奴の方が上だとしても… 湘北は負けんぞ」と、反撃ののろしを上げるのだ。

 この“コートでかつらむき”はシュールでコミカルでありながらも、試合の大きな転機となる名シーンである。ライバルに彼らしい方法で激励の言葉を送る魚住の姿が、実にアツかった。

■バスケへの想いがあふれる「大好きです」花道の告白シーン

  原作30巻で描かれた、背中を痛めながらも試合に出ようとする桜木花道の「告白シーン」も、カットされていた。第1話で描かれた晴子の「バスケットはお好きですか?」という問いに対し、花道が時を経て応えた言葉だ。一瞬、晴子への告白だと錯覚してしまうほど、強い想いが伝わってくるシーンである。

 第1話での花道は、「大好きです」と嘘をつき晴子の気を引こうとした。しかし、数カ月のバスケット経験が花道を大きく変えていく。上達していく面白さ、ライバルとの対決、仲間たちのバスケットに懸ける想い……。さまざまな経験が花道を「バスケットマン」に変えた。

 「大好きです」「今度は嘘じゃないっす」

 このセリフは花道のバスケへの想いを表す超重要なものである。しかし、映画ではこの告白シーンはカットされ、花道が「交代ヨロシク!!」と無理をして出場する場面に飛んでいる。

 この場面の良さを完全に理解するには、第1話の質問シーンが必須。映画ではこのシーンを振り返る時間がなく、カットしたほうがすっきりまとまるという判断があったのかもしれない。しかしながら、原作ファンにとっては1話の伏線回収という意味があったため、「アニメで見たかった」という声も多い……。

■手に汗握る試合を彩る牧、清田らの解説

 細かいところで言うと、牧紳一や清田信長、魚住、諸星大などのプレイヤー、高頭監督の解説シーン。原作ではこれら観戦者たちの解説が要所要所で入っており、そのおかげでバスケのルールがあまり分からなくても楽しめるようになっていた。また、試合中の選手の葛藤を同じ目線で語ってくれているため、選手ならではの心理も分かりやすかった。

 たとえば、高頭の「湘北の このいいリズムを生み出しているのが誰か 分かっているか………」「グッドリズム!!」「グーッドウィドゥム!!」という解説。花道のジャンプを見て「高い!!」「いやそれより…」「速い!!」といった諸星、牧、堂本五郎監督の解説のコンビネーションなど、試合を彩る解説も山王戦の魅力だ。

 映画では試合の臨場感を活かすためか、試合中のセリフやモノローグはかなり少なくなっている。海南大附属高校のメンバーが会場にいる様子は分かるものの、セリフなどはカットされていた。それぞれの個性がにじみ出る解説、キャラの声でも聞いてみたかった気がする。

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