■鷹村を怒らせた代償は重かった…ブライアン・ホーク
世界チャンピオンであろうと、再起不能のリスクは常に付きまとう。そんなボクシングの残酷な常識を体現したのが、WBC世界J・ミドル級チャンピオン、ブライアン・ホークだ。一歩の先輩・鷹村守初の世界戦の相手となった。
ホークはスラム街からのし上がってきた過去があるからか、非常に荒っぽい性格をしており、鷹村のみならず日本人を侮辱した発言をくり返し、鴨川会長に傷を負わせる暴挙にも出ている。しかし実力は本物で、型にハマらない常識外のボクシングで鷹村を圧倒し続けた姿に「ムカつくけど強い」と認めざるをえなかった読者も多い。
だが、怒らせた相手があまりにも悪すぎた。試合終盤に怒りで覚醒した鷹村に人体の急所を的確に攻められたホークは「オレを確実に殺しにきている」と悟り、人生で味わったことのない恐怖を感じる。結局、鷹村の豪腕にホークは完膚なきまでに打ちのめされ、最後は大量の血をまき散らしながら敗北した。
本作でもベストバウトの誉れ高い試合だが、その後のホークは悲惨のひと言に尽きる。
第523話で再登場したホークはボクサーを引退しており、鷹村の名前を聞いただけで錯乱する状態に陥っていた。トラウマを拭い去ろうと酒に溺れるホークの痛ましさたるや……。
ホークの所業は間違いなく悪かったが、ここまで破壊された姿を見せられるとさすがに同情してしまう。
『はじめの一歩』はボクシングの素晴らしさを描くと同時に、残酷さからも目を逸らさない漫画だ。今回紹介したキャラたちはその象徴であり、彼らがいるからこそ栄光を掴むボクサーが輝くのだろう。
だが、壊れたボクサーがそれで終わりとは限らない。一歩に叩きのめされた速水は第1218話でまさかの再登場を果たし、今もプロのリングで戦っていることが明かされた。
壊れたボクサーの完全復活はありうるのか、速水の今後に期待したい。