■いくつものメディア化作品や新たな試みも
70年代の『チャンピオン』といえば、1976年にテレビアニメ化され人気となった『ドカベン』をはじめ、掲載漫画のドラマ化やメディアミックスが盛んにおこなわれていた。
なかでも筆者が一番夢中になったのが、永井豪さんの『キューティーハニー』(1973年より連載)だ。まだ、メディアミックスという言葉もなかった当時、理容室で『チャンピオン』をまとめ読みをした際に「テレビと同じ漫画が載っている!」と、大変驚いたものである。
お色気満載で子ども心になんだか恥ずかしかったが、当時の少年誌としては「主人公が女の子」というのは珍しく、同姓としても戦う姿がカッコよくて憧れた。「ハニーフラッシュ」のマネをして、首にリボンを巻いていたものだ。
また、1973年は手塚さんの『ミクロイドS』(1973年より連載)、横山光輝さんの『バビル2世』(1971年より連載)が、アニメ化されている。
他ジャンルに目を向けると、ホラー漫画も名作揃いだ。
「このうらみはらさでおくべきか」が決め台詞だった、藤子不二雄Aさんの『魔太郎がくる!!』(1972年より連載)、「しんぶ~ん」の手書き文字にゾッとさせられたつのだじろうさんの『恐怖新聞』(1973年より連載)。そして、筆者が個人的に一番怖かった、黒魔術を使う主人公が登場する、古賀新一さんの『エコエコアザラク』(1975年より連載)だ。
これら重厚なホラー漫画がほぼ同時期に誌面を飾っていたのだから、『チャンピオン』黄金期のとんでもなさには驚いてしまう。
余談ではあるが、古谷三敏さんの『手っちゃん』(1975年より連載)が個人的に好きだったが、主人公が手むくじゃらな「手」のオバケというのも斬新で、なによりホラーであったかもしれない。
スポーツに医療、ギャグ、下ネタ、ホラー、アニメ化など、70年代の『チャンピオン』は読者層である青少年や子どもの好きな要素が詰め込まれた魅力的な雑誌だった。
その一方で、光瀬龍さん原作のSF小説『百億の昼と千億の夜』(1965年発表)を、少女漫画家・萩尾望都さんが1977年にコミカライズ。終末思想など難解な作品で当時はさっぱりわからなかったが、今思えばかなりの挑戦作であった。
出版業界は1996年をピークに右肩下がりとなり、雑誌の発行部数は年々減少傾向である。そんな現代において以前のような挑戦は難しいかもしれないが、これからも『チャンピオン』には魅力的な作品を生み出し続けてほしいと思う。