『ドカベン』『ブラック・ジャック』『キューティーハニー』…各ジャンルの人気作ズラリ!70年代『チャンピオン』黄金期がヤバすぎた件の画像
週刊少年『チャンピオン』50周年記念サイトより ©水島新司 ©Tezuka Productions ©藤子スタジオ ©2019 Go Nagai/Dynamic Production © AKITA PUBLISHING CO.,LTD.

 日本は「マンガ大国」として諸外国でも有名だが、講談社『週刊少年マガジン』や小学館『週刊少年サンデー』(それぞれ1959年に創刊)、集英社『週刊少年ジャンプ』(1968年に創刊)、そして秋田書店『週刊少年チャンピオン』(1969年に創刊)は、“四大少年誌”と称され、半世紀以上に渡って少年漫画界を牽引してきた。

 なかでも近年の『チャンピオン』には『魔入りました! 入間くん』、『BEASTARS』、『吸血鬼すぐ死ぬ』、『刃牙』シリーズなど話題作も多いが、発行部数という点から見ると、他3誌に水をあけられている印象があるかもしれない。

 だが、実は70年代後半には発行部数250万部を叩き出し、『ジャンプ』を抑えて少年誌トップに君臨した“黄金時代”があったことをご存じだろうか。

 そこで当時はまだ子どもで、父親の理髪店に付いていくたび大量の少年誌を読み漁っていた筆者が、黄金期の『チャンピオン』の面白さを語ってみたいと思う。

※本記事には各作品の内容を含みます

■路線変更や巨匠復活など長く語り継がれる2つの名作

 隔週刊行でスタートした『チャンピオン』は、翌年6月より週刊行化される。

 執筆陣は手塚治虫さん、石ノ森章太郎さん、さいとう・たかをさんといったベテラン勢で固められたが、4誌のなかで後発だった本誌は発行部数でも出遅れ気味だった。

 大きな転換期を迎えたのが、1972年より着任した2代目編集長・壁村耐三さんの存在だ。

 壁村さんは、作品を読み切り形式にするなど大胆な変革をおこない、手塚さんの代表作のひとつ『ブラック・ジャック』(1973年より連載)の誕生にも貢献するなど、黄金期の礎となる"二大柱”を築いた伝説の編集長である。

 ひとつめの柱、水島新司さんの『ドカベン』(1972年より連載)は、もともとは柔道漫画であったが途中で野球漫画へと路線を変更。1981年に連載は終了するが、その後、続編が執筆され、最終的にはキャラクターたちがプロ野球の世界でも活躍。ファンの間では“大河野球漫画”とも呼ばれる超人気作品だ。

 “熱血ハンサム”が主流だった70年代のスポーツ漫画において、主人公はマイペースで素朴な風体、加えて「山田太郎」というネームセンスだったことも逆にインパクトがあった。

 山田が所属する明訓高校野球部も魅力的で、口の悪い岩鬼正美はどこか憎めないし、いつもニコニコしているのに怒ると怖い微笑三太郎の存在も面白かった。

 また当時は、殿馬一人のマネをして、語尾に「づら」を付ける子どもも続出。ちなみに筆者の友達は里中智の大ファンだったので、江崎グリコのおまけに『ドカベン』が登場した際にはお菓子を買って協力したものである。

 早い時期に「根性論」だけの野球から脱却し、その論理的思考やテクニック描写は今もSNSなどで話題になるほど。また、捕手=ぽっちゃりというイメージを固定化させるなど、のちの野球界にも大きな影響を与えた存在である。

 もうひとつの柱となった『ブラック・ジャック』は、ストーリー漫画でありながら「ほぼ1話完結」のため、子どもでもストレスなく読めた。さらに、ブラック・ジャックが謎の病気の正体を暴いて神業で治してしまう流れは、簡潔でスカッとする。

 その一方、医療の限界や葛藤、人の心の難解さも描かれているため、大人になって読み返すと子どものころとは違った印象のエピソードが多く、何度でも味わえる名作だ。

 また、ピノコが両手で両頬を抑えながら叫ぶ「アッチョンブリケ」ポーズは、当時は妹とマネするほど可愛くってハマった。

■インパクトのある決め台詞、むちゃくちゃな設定が秀逸なギャグ漫画たち

 当時の『チャンピオン』といえば、バラエティ豊かな「ギャグ漫画」も忘れてはならない。思わず「何だこりゃ?」と頭をひねってしまうような設定のものもあったが、とにかくどれもが強烈で、秀逸なギャグやパロディに楽しませてもらった。

 吾妻ひでおさんの『ふたりと5人』(1972年より連載)は、主人公の中学生・平竹おさむが、美少女・菊池ユキ子とまったく同じ容姿を持つ「父、母、弟、祖母」の5人家族と巻き起こす少しエッチな漫画だ。ユキ子の家族は今でいう「美魔女」と「男の娘」と考えたら、50年前に時代を先取りしていたセンスにビックリだ。

 次に、山上たつひこさんの『がきデカ』(1974年より連載)。本作は少年警察官・こまわり君と、彼が通う小学校の同級生たちと繰り広げる下ネタ満載ギャグ漫画である。劇画調タッチで描かれた2頭身のこまわり君はかなり異質だったが、「死刑!」「八丈島のきょんっ!」など、勢いのあるギャグは子どもたちの間でちょっとしたブームになった。

 そして一世を風靡し、筆者の周りでも大人気だったのが、鴨川つばめさんが描いた『マカロニほうれん荘』(1977年より連載)だ。主人公の高校生・沖田総司と、24回落第している“きんどーさん”こと金藤日陽、10回落第している“トシちゃん”こと膝方歳三を中心としたドタバタ劇が繰り広げられる。

 当時の流行や世相を反映したパロディが多く、西城秀樹さんのカレーのCM「ヒデキ感激!」をもじった「トシちゃんかんげき──!!」が登場するたびに喜んだものだ。絵柄もポップでとっつきやすく、ハンサムなトシちゃんがひし形の口になったり、頭身の低いきんどーさんが乙女だったりと、妙に愛着が湧いた作品でもあった。

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