■根はイイ奴というのが垣間見える「ハッピーバースデイ・ジャイアン」

 コミックス23巻に登場する「ハッピーバースデイ・ジャイアン」は、ジャイアンの本音や弱さが垣間見える話だ。

 相手を足止めしてくれるドラえもんのひみつ道具「相手ストッパー」を使い、のび太たちを招集し、自分の誕生日を無理やり祝ってもらったジャイアン。

 もちろん誕生日会は盛り上がらず、ジャイアンは“しぶしぶ祝ってもらっても嬉しくない”と、追い返してしまう。

 だが、その夜、ジャイアンはドラえもんを訪ねる。「おれって、どうして人気がないんだろ」と落ち込む様子に、ドラえもんは「きまってるだろ。わがままで、らんぼうで、ずうずうしくて…」と、本音を伝える。

 それを聞いたジャイアンは「やっぱり…。自分でもわかってるけど、どうにもならないんだ」「せめて一年に一度、誕生日くらい心から祝ってほしいよ~」と、なんと泣きつくのであった。

 普段は威張り散らしているジャイアンだが、その虚栄心は仲間の承認を求めている気持ちの表れなのかもしれない。自分でも人気がない理由をわかっていると反省する姿からは、根はイイ奴ということが分かる。

 ちなみにジャイアンはその後、腹のたつ時に思い切り息を吹き込むと腹だちが消えるひみつ道具「かんにんぶくろ」をドラえもんに借り、時間を誕生日の3日前に戻してもらっている。しかし「かんにんぶくろ」はあっという間にパンパンに。最後は自力で怒りを抑えて頑張る姿が見られた。

 これを踏まえるとジャイアンはとても寂しがり屋で、仲間たちに愛されたいという気持ちが人一倍強いように思える。

 

 他人に無理やり自分の歌を聞かせたり、喧嘩をふっかけたり……人に迷惑をかけることも多いジャイアンだが、彼のことを心底嫌いという人は少ないように見える。

 それはジャイアンの行動が、どこか憎めない子どもらしい純粋さを持っているからだろう。それゆえに仲間たちは彼を完全に拒絶することなく、良いところもあるからこそ付き合い続けているのだ。

 そのギャップもまた、ジャイアンが今も昔も愛されるキャラクターであるゆえんだろう。

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