■再登場した『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では覚悟の行動を見せる

 テレビシリーズではわずか2話しか登場しなかったカムランだが、彼は『機動戦士ガンダム』から14年後を舞台にした『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にも登場しており、その覚悟ある行動で印象を大きく変える。

 カムランは、「サイド1」ロンデニオン政庁の会計監査局員にまで出世しており、シャア・アズナブルが新生ネオ・ジオンの総帥として参加した連邦軍との秘密裏の会議に同席するほどの立場となっていた。

 この会議でシャアの不穏な動きを察知したカムランは、ネオ・ジオンがアクシズを地球に落とす企みを見抜く。そしてカムランは、地球連邦軍の独立部隊ロンド・ベルの指揮官であり、ミライの現在の夫でもあるブライト・ノアにこの情報を伝え、さらに会計監査局が所有する15基の核弾頭を託すのであった。

 これは、カムラン自身の立場を危うくする重大な決断だ。終身刑は免れない可能性もあったが、「私はミライさんに生きていてほしいからこんなことをしているのですよ」と、フラれた男のあくまで個人的な理由として伝え、ブライトに借りを感じさせない配慮まで見せている。かつての恋敵にここまでできる男もなかなかいない。

 最終的にはカムランが託した15発の核ミサイルは、シャアと強化人間ギュネイ・ガスによって14発が撃ち落とされ、残った1発がムサカ1隻を沈めるにとどまる。本命であった地球に落ちようとするアクシズを止めることはできなかったが、それはあくまで結果であり、カムランが託した核弾頭が戦略的に重要な役割を果たしたのは確かだ。

 テレビシリーズ33話のラストでカムランは、ミライから「カムラン、あなたは戦争から逃げすぎて、変わらなすぎているのよ」と指摘され、「君を愛しているという気持ちは変えようがないじゃないか」と返している。だが、戦争をテレビ中継ではなく実際にその目で見たことで彼の気持ちは大きく変わったのだろう。

 カムラン・ブルームは、婚約者にフラれたあわれな男として記憶に残っていたが、改めて彼を振り返ると、どこまでも愛するミライを思った人物でもあった。『逆襲のシャア』では地球を救うために核弾頭をブライトに託すという、守りたいもののために命を張ることができる男気のある人物だった。

 なお漫画『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』によると、カムランは実際、核弾頭の件で終身刑に処されそうになっていた。しかし、ブライトが上層部と取引交渉を行ったことでその罰を免れることになる。ブライトもまた、カムランの決死の行動に彼を助ける形で報いていた。

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