■多くの者に慕われていた人間性
ガンダムと戦って戦死したトクワンだったが、その直後の上官や部下の反応からも、彼の優秀さが感じとれた。
シャアは「トクワンが沈められた……」と、彼の死が意外だといわんばかりの反応をみせる。さらにトクワンの部下で、モビルアーマー・ザクレロのテストパイロットでもあるデミトリーは、すぐさま出撃したい旨を申し出た。
シャアはその進言を却下したが、結局デミトリーは我慢しきれず、命令を無視してホワイトベースに強襲をしかけてしまう。
このデミトリーの行動の裏側には、どうしてもトクワンの仇をとりたいという、強く上官を慕う気持ちがにじみ出ていた。
なお、デミトリーの独断専行を知ったシャアは、出撃を許した副官・マリガン中尉を問い詰めるが、彼もデミトリーの行動を支持するような態度をみせている。
結果的にこの仇討ちは失敗に終わったものの、命を捨てる覚悟で出撃を敢行したデミトリーや、上官のシャアの意見に逆らって出撃を許可したマリガンの様子からも、いかにトクワンが慕われていたかが分かるエピソードだ。
『機動戦士ガンダム』における主要キャラとはいえないかもしれないが、トクワンという人物の有能さが分かる場面を振り返ってみた。ビグロを駆る高い操縦技術だけでなく、人の上に立つ人物としても優れていたのは間違いないだろう。短い出番ではあったが、シャアの近くにいた有能な人材のひとりとして、覚えておきたい人物だ。