最高の刑事であり相棒…25周年『仮面ライダークウガ』を大人のドラマにした「一条薫」という存在の画像
Blu‐ray BOX『仮面ライダークウガ』第1巻(東映ビデオ)©石森プロ・東映

 2000年に放送が開始された『仮面ライダークウガ』は、平成仮面ライダーシリーズ第1作目となる記念すべき作品であり、今なお根強い人気を誇っている。本作の主人公は、オダギリジョーさん演じる五代雄介/仮面ライダークウガだ。しかし、物語を語るうえで欠かせない存在が、もう一人の主人公とも呼ばれる男・一条薫である。

 葛山信吾さんが演じる一条は、警察官として未確認生命体事件に立ち向かい、五代とともに戦い続けた。その存在感は単なるサポート役にとどまらず、物語の根幹を支える重要な要素でもあった。

 五代と一条の関係性、彼の卓越した能力、そして背負った想い……25周年を迎えた今、あらためて「一条薫」というキャラクターの魅力を振り返ってみたい。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■刑事・一条薫としての信念

 リアル志向で描かれている本作では、五代がクウガとして怪人・グロンギたちと戦うには、警察をはじめとする人間の協力が不可欠だった。その架け橋となるのが一条薫である。

 長野県警から警視庁へ派遣され、「未確認生命体関連事件特別合同捜査本部」の一人として事件に対応する一条。一方、五代は世界を旅する冒険家であるものの、まったくの民間人だ。しかし人々を救うため、咄嗟に変身ベルト「アークル」を装着し、グロンギとの戦いに巻き込まれていく。

 二人は初代『仮面ライダー』1号&2号とFBI捜査官・滝和也の関係性にも少し似ているように思う。しかし決定的な違いは、一条は仮面ライダーの力に頼らざるを得ないという現状を受け入れながらも、そこにどこか申し訳なさや負い目を感じている点だろう。

 「EPISODE2 変身」にて、五代が事件へ深くかかわろうとすることに危機感を抱いた一条が、彼の胸ぐらを掴みながらこう言い放つ。「君が戦う力を得たと思うのは勝手だ! だが君に戦う義務はない。これは市民を助けるという我々警察官の仕事だ! 中途半端にかかわるな!」と。

 この台詞から、一条の根底には“戦い”は刑事である自分の責務であり、民間人である五代を巻き込みたくないという強い思いがあることが分かる。五代が戦う決意をしたあとも、彼の負担を少しでも減らそうとし続ける一条の姿が印象的だった。

■圧倒的ハイスペックを誇る“一条さん”

 一条は変身できないものの、ただのサポート役ではないハイスペックな刑事であった。

 初登場時は25歳で階級は「警部補」。これはドラマ『古畑任三郎』の田村正和さんが演じた古畑と同じである。若くしてこの地位に就いていることからも、相当なエリートであることがうかがえる。

 さらにその実力は多方面にわたる。「EPISODE 10 熾烈」では、クウガがタイタンフォームで大剣を扱う際、全国警察剣道大会で優勝経験を持つ一条が直々に剣の指導をおこなっている。

 また「EPISODE 28 解明」では、怪人ゴ・ベミウ・ギの犯行法則を、ショパンの『革命のエチュード』の音階と音符の長さに応じて実行していると見破るなど、卓越した推理力を発揮。それとともに、彼はピアノにも精通していることが明らかになった。

 なかでも、一条の射撃の腕前は群を抜いていた。「EPISODE 30 運命」にて。グロンギ対策のために開発された特殊弾の試作品が支給されると、ビルの屋上で苦戦するクウガを一条はライフルでサポート。怪人ゴ・ガメゴ・レの鉄球の鎖を見事に撃ち砕き、さらに指輪状の武器という小さな的を続けざまに撃ち抜くという離れ業を披露している。

 このようにハイスペック刑事である一条は、五代とともに敵に立ち向かうシーンも多かった。もしも平成仮面ライダーシリーズ第2作目『仮面ライダーアギト』に登場した警視庁開発の特殊強化装甲服「G3」が一条に支給されていたら、戦いがもっと楽になっていたかもしれない。

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