
荒木飛呂彦さんによる『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)のスピンオフに『岸辺露伴は動かない』がある。本作では、第4部に登場する漫画家・岸辺露伴が主人公となり、不思議な体験の数々を見せてくれる。
そして、その実写ドラマシリーズが2020年に開始。実力派俳優の高橋一生さんが露伴を演じることで話題となった。1期で3話放送されそこから人気に火がつき、2期、3期と続いて8話まで放送され、2023年には『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が映画化された。
昨年には第9話「密漁海岸」が放送され、今年の5月には『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が劇場公開される。毎年のように放送・公開されていることからも、かなり好評といえるだろう。
本作が実写ドラマとして成功したのには、主演の高橋さんの演技力の高さも大きく影響している。そこで今回は、本シリーズで過去に高橋さんが見せた名演技について紹介していきたい。
※本記事にはドラマ『岸辺露伴は動かない』シリーズの内容を含みます
■露伴というキャラの作り込み
なんといってもまず注目したいのが、高橋さんによる岸辺露伴というキャラの作り込みだ。露伴は漫画にかける熱量が異常で、より良い作品を描くためにとことんこだわる性格をしている。そのため、周りからすると変人にしか見えない……。
そんな露伴の偏った性格を、高橋さんは声のトーンや口調でも表現している。淡々と、しかしまくしたてるように話し、最後に語尾をかなり強めるのが印象的だ。その時目が笑っていないことも多いから、けっこうな圧がある。
そんな独特な話し方だからこそ視聴者も惹きつけられてしまうのだろう。得体のしれない事象の説明も同じようにするから、逆に恐怖が伝わりやすい。
その一方で恐怖に直面した際には、オーバーといってもいいほどの体の動きや表情で表現している。あまりやりすぎると嘘くさくなりそうなものだが、高橋さんの場合それを感じさせないから不思議だ。見ていても恐怖がじわじわと迫ってくるように感じられる。
また体を張った演技も素晴らしい。たとえば「背中の正面」の“背中を見せると死んでしまう”という状況では、宅配便の人が入ってくると瞬時にブリッジをして対応していた。ここではきれいなブリッジを決めたままセリフを言うのはもちろん、片手を離して指さすといった動作まで披露……。相当苦しいはずだが、鍛えている高橋さんだからこそできた芸当といえるだろう。
シリーズ全体を通して、高橋さんの演技からは原作へのリスペクトと同時に彼らしい「露伴」に対する解釈がうかがえる。だからこそ、ただの原作の「再現」以上の表現に成功しているのだろう。