■優秀な部下の壮絶な最期

 通信ごしにシャアとドレンが再会を果たしたのは、第32話「強行突破作戦」のこと。このときドレンは少尉から大尉に昇進しており、ムサイ級3隻からなる「キャメル艦隊」の指揮官となっていた。

 ちょうどドレンの艦隊とシャアのザンジバルのあいだにホワイトベースが位置しており、シャアはドレンに追撃任務を命じる。これにドレンは「追いつけますか?」とシャアをからかうようなことをいうと、シャアは「ドレン、私を誰だと思っているんだ」と応じ、互いに軽口を叩き合っていた。

 一年戦争時のシャアとこうしたやりとりができる関係性を構築した部下はドレンくらいであり、相当な信頼関係を感じるシーンでもある。

 先に接敵したドレンはキャメル艦隊からリック・ドム6機を出撃させ、3隻のムサイも攻勢に出る。しかし、誤算だったのは、かつてファルメル1隻でホワイトベース隊とやりあった当時と、相手の戦力がまるで別物になっていた点だろう。

 セイラやスレッガーも出撃し、連戦続きで積み上げた経験は彼らを大きく成長させていた。なによりガンダムに乗るアムロがニュータイプとして覚醒しつつあり、ホワイトベースの操舵手であるミライ・ヤシマまで、ニュータイプ的な先読み能力で攻撃を回避する場面もあった。

 そしてこの戦いの勝敗を決めたのは、やはりアムロが駆るガンダムの存在だ。死角からの射撃で1隻のムサイを撃沈すると、リック・ドムと交戦しながらビームサーベルでドレンの乗る旗艦キャメルの艦橋を斬り裂いた。

 生身のままブリッジの亀裂から宇宙空間に放り出され、死亡したドレン。彼の指揮に明らかなミスがあったとは思えず、純粋にホワイトベース隊の強さが想像以上だったとしかいえない結末だ。

 ドレンの死を知ったシャアは「あのドレンが私の到着までもちこたえられんとはな……」と力なくつぶやき、少しうつむき加減になっていたのが印象的である。そして「あのドレンが」という表現に、シャアの信頼がうかがえる。

 ちなみに『機動戦士ガンダム公式百科事典』(講談社)に、ドレンは「一説によればシャアの素性を知っていた」とも書かれている。

 

 今回はシャアの部下ドレンの活躍と、その壮絶な最期を振り返った。艦同士の戦いにおいては、ドレンとブライト・ノアの両名は「狙いを定めて集中攻撃せよ」と、くしくも同じ指示を出していたのが印象的である。その後ブライトが宇宙世紀を代表する名艦長として名を馳せたことを考えると、もしドレンが生存していたら、シャアの側近として重用されていたかもしれない。

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