■ライバル赤木の窮地に贈った「まさかのエール」

 『スラダン』を語るときに大いに盛り上がるのは、やはりインターハイ2回戦の湘北VS山王戦ではないだろうか。ピンチと逆転を繰り返したこの大一番は、間違いなく作中で最高の盛り上がりを見せた一戦だった。

 ファンならもちろんご存知だと思うが、本試合では魚住も大きな役割を果たしている。名シーンとして知られる「大根のかつらむき」だ。試合を観戦していた彼は、ライバルの赤木が迷走しているのを見かねて、突如コート内に現れると板前姿で大根のかつらむきを披露してみせたのである。

 もちろんすぐに追い出されてしまったが、魚住は河田雅史を「鯛」に、赤木を「鰈(かれい)」にたとえ、「泥にまみれろよ」という言葉を贈る。なぜ大根かといえば、安西先生が解説した通り、かつらむきした大根を細く切ると刺身のツマになるから……つまり「引き立て役であれ」ということだろう。

 「コートに包丁を持ってくるな」などと無粋なことをいってはいけない。かつての自分とライバルの赤木を重ね、彼らしい方法で鼓舞するのがアツすぎた。

 この場面の魚住は、まさにインターハイ予選で実感した「オレはチームの主役じゃなくていい」ということを伝えている。自分が乗り越えた壁を、赤木にも「乗り越えろ」とエールを送ったのだ。

 「自分が主役になれないなら、ほかのメンバーを主役にしてやれ」というメッセージは、魚住がいうからこそ胸に響く。作中で赤木と魚住の関係性を「友だち」や「親友」と表現することはないが、このシーンを見てしまうと2人が親友のように思えてしまう。

 

 陵南は魚住と仙道が引っ張っていた(福田も目立つが登場が遅かった……)チームであり、もっと彼らの活躍が見たかったというファンも多いだろう。『スラダン』が今以上の展開を見せるのは難しいと思うが、「エピソードオブ陵南」なんて考えただけでもワクワクしてくる。

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