藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』には、子どもたちに夢を与えてくれるエピソードがたくさん登場する。なかには動物の命を助けたり、困っている人を幸せにしたりと、ほっこりするエピソードも多いのだ。
しかし物語を読み返すと、これが現実ならかなり恐ろしいのでは……と思えるようなものも存在する。使い方を誤っただけで一生家に帰れなくなったり、誰にも会えなくなってしまったり……今回はそんな『ドラえもん』のトラウマ回を紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■タイトルからは想像もできないホラー回!? 「勇気百倍うちわ」
「勇気百倍うちわ」は『ドラえもん』のテレビアニメに登場するオリジナルストーリーだ。
ひょんなことから町外れの幽霊屋敷で肝試しをすることとなったのび太とジャイアン、スネ夫。怖がるのび太はドラえもんに泣きつき、ひみつ道具の「勇気百倍うちわ」を借りる。これであおぐと勇気が湧き、何に対しても動じなくなるというのだ。
そうして準備万端で幽霊屋敷に行ったのび太は、ジャイアンとスネ夫がいたずらで作ったお化けを怖がらずに済んだ。
しかしほっとしたのも束の間、その後ガイコツの恐ろしいお化けが登場し、みんなパニックに……さらにうちわも破れてしまう。だが、実はそのお化けの正体は空き巣常習犯で、この屋敷に隠れ住んでいた男だった。
男は無事に逮捕されたが、塔の最上階の部屋がなぜか気になるのび太。帰り際、その部屋を見ると明かりがついており、そこには見知らぬ男が立っていた。最終的にその男はみるみるうちにガイコツになっていき、なんとそこで物語は終わってしまった。
そもそも空き巣が変装した不気味な幽霊の姿もインパクト大だったのに、本物の幽霊まで登場してしまうとは……。
このアニメはタイトルこそ「勇気百倍うちわ」だが、正直言ってそのうちわの存在を忘れてしまうほど全体的に恐ろしかった。『ドラえもん』らしからぬ心霊現象で締めくくられている、トラウマもののエピソードだ。
■ドラえもんはのび太を助ける気がなかった?「無人島へ家出」
てんとう虫コミックス14巻「無人島へ家出」は、『ドラえもん』の数あるストーリーのなかでも衝撃的なエピソードとして知られている。
あらすじはこうだ。ある日、帰りが遅いと家族に叱られたのび太は、その怒りから家出を決意。ドラえもんから適当に奪ったひみつ道具を使い、無人島に到着する。
しかし持参した道具はまったく役に立たず、無人島でのサバイバル生活を余儀なくされたのび太。なんとその期間は10年にも及んでしまう。
その後、偶然にも「SOSはっしんき」を起動することができたのび太はドラえもんに発見され「タイムマシン」と「タイムふろしき」を使い、家出自体を“なかったこと”にし、家族のもとへ戻れたというエピソードだ。
のび太が家出をするエピソードはよくあるが、多くはその日のうちに家に帰っている。しかしこのエピソードでののび太は、10年間ものあいだ、ひとり無人島で暮らし、身体はすっかり大人になってしまっていた。このシチュエーションにまず恐ろしさを感じる。
しかもドラえもんなら、たとえば「どこでもドア」など便利なひみつ道具を駆使することで、家出したのび太を簡単に見つけられたはずだろう。しかし今回はそのような方法を使わず、10年もの間放置しているのだ。
あえてのび太を見つけない理由があったのだろうか……そう思うと、少し不気味にも思えるエピソードである。