日本人形にマリオネット…『金田一少年の事件簿』トリックにも使われた?トラウマレベルに不気味だった「人形」たちの画像
週刊少年マガジンコミックス『金田一少年の事件簿』File15 魔術列車殺人事件(講談社)/原作:天樹征丸・金成陽三郎、作画:さとうふみや

 『金田一少年の事件簿』(原作:天樹征丸氏・金成陽三郎氏、作画:さとうふみや氏)といえば、犯人側の斬新なトリックと、金田一耕助の孫である高校生・金田一一の卓越した推理力が見どころのミステリー漫画だ。

 本作は殺人事件を扱う内容のため、思わず目を覆いたくなるようなシーンも多く登場するが、筆者的には「人形」が登場するストーリーの描写がとくに怖かったように思う。

 たとえば、推理作家の莫大な遺産を巡って連続殺人が起こる「露西亜人形殺人事件」。人形のサイズや暗号の解読、見立て殺人など犯人のトリックにも人形が使われる事件だが、たびたび登場する不気味な人形の描写に背筋が凍った。

 本作にはほかにも人形を使ったストーリーがあるので、トラウマ級の恐ろしい描写とともに紹介していこう。

※本記事には『金田一少年の事件簿』の内容を含みます

■人形と人間の区別がつかないほど精巧…「人形島殺人事件」の身代わり人形

 不動高校の教師・朱鷺田忍の頼みによって「火吐潟島」に行くことになった金田一と七瀬美雪。顔なじみであるフリーライターのいつき陽介や警視庁の警部・剣持勇も、それぞれの事情でこの島に向かっていた。

 このエピソードに出てくる人形の扮装をした覆面作家集団「ペルソナドール」は、初登場時から得体が知れない。日本人形(紅小路巴)・フランス人形(鈴丘魔矢子)・ピエロ人形(漢田切裏子)とどれもシュールで、言葉を発さず筆談でコミュニケーションを取るから怪しさ満載である。

 金田一たちが宿泊する人形荘では「人形供養祭」がおこなわれており、そこで各人の身代わり人形を収める習わしがあった。

 かつてこの島が立て続けに災害に見舞われた時、当時の村長が自らの命を捧げ、遺体を首・胴体・下半身を3つに分けさせて海・山・畑に埋めさせた。その言い伝えによって作られたのが村長人形で、首・胴体・下半身に分けて祀られている。この村長人形は島を離れて人形供養を怠る島民たちを呪う「祟り人形」として恐れられていた。

 そういった背景もあり、この人形供養は島の人間にとって非常に大切なもので、殺人事件が起こる中でも強行される。それがおこなわれる人形社には覗き窓があるのだが、そこから中を見た剣持は、人形ではなく日本人形の扮装をしたペルソナドールの1人がいるとあわてる。

 その後5、6分かけて人形社の中に行ってみると、そこには人間の生首が……トラウマになりそうだが、ここで初めてペルソナドールの仮面が取れて、実は日本人形の中身が朱鷺田だという衝撃な展開も待っていた。

 これ以前にペルソナドールの鈴丘・漢田がそれぞれ村長人形と同じように体を切断されてしまっていたが、金田一好きなら「切り取られた部分は別人のものじゃないの?」と疑うものである。

 実際は逆で、朱鷺田の体だけで被害者3人分を作り上げていた。普段から3人ユニットではなく、朱鷺田が一人で入れ替わるように3人衆を演じており、残りの2人はただのアルバイトに都度やらせていたというのだ。

 朱鷺田を殺した真犯人「祟り人形」が途中で変装することで入れ替わり、巧妙に3人衆であることを演じきっていた。そして、金田一が真犯人を追求する「祟り人形はあんただよ!」というシーン。真っ暗な中、村長人形が目と口をカクンと開く姿が描かれ、ホラーすぎて恐怖だった……。

 ちなみにこのストーリーはかなり切ない。被害者側だけでなく、加害者側にもやるせないドラマが待っているやりきれない展開だった。

■見せ方が不気味過ぎて恐怖…「魔術列車殺人事件」のねじれたマリオネット

 金田一にとって宿命のライバルとなるのが「地獄の傀儡師」こと高遠遙一だ。彼の初登場は「魔術列車殺人事件」である。警視庁に送られてきた「脅迫状在中」のからくり箱。剣持の頼みで金田一がそれを開けると中には“ねじれたマリオネット”が入っており、今回の事件の不気味さを予感させた。

 金田一たちは脅迫状に書かれていた北海道の死骨ヶ原湿原行きの寝台列車に乗って、そこで「幻想魔術団」のマジックショーを楽しむ。しかしそんな中爆弾騒ぎが起き、列車は一時緊急停車。たまたま居合わせた明智健悟警視も合流し、何事もないとわかると列車は終点まで動き出すのだが、ここで「地獄の傀儡師」から送られてきた携帯電話に着信が入る。いわく、コンパートメント3号室で死のマジックショー「天外消失」が披露されるという……。

 駆けつけた金田一が見たのは、真っ赤なバラが敷き詰められた室内と、多数の風船を付けられて頭にはナイフが刺された「幻想魔術団」の団長・ジェントル山神の死体だった。

 これだけで奇妙な光景なのだが、煙が出始めたことで爆弾があると思い一時ドアを閉めると、風船の割れる音とともに死体は消失してしまった。

 もちろん、これは「地獄の傀儡師」のアリバイ工作のトリックである。やがてステーションホテルに着いた一行を待ち受けていたのは、首や手足の関節をバラバラに切り離され、ねじれた状態で天井から吊り下げられた山神団長の死体だった。

 人形をねじれさせた通りに死体をつなぎ合わせるなんて尋常な精神力ではない。しかも、列車の中で団長はすでに殺害されており、バラバラになった体はバッグへ入れた状態でホテルへ送り、頭部はなんと高遠が常に持っていたショルダーバッグに入れていたという筋金入りの冷徹さ。人の生首を普通に持ち歩くなんて……高遠の残忍さが浮き彫りになるきっかけとなった事件だった。

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