■死への恐怖を突きつけられる『北斗の拳』ラオウの新血愁
原作:武論尊さん、作画:原哲夫さんによる『北斗の拳』(集英社)のラオウもかなり嫌な技を披露している。それが、レイ相手に使った秘孔新血愁を突く技だ。
この秘孔を突かれると、3日後には体中から血液を吹き出して死んでしまう。具体的な絵面が思い浮かびやすいがゆえに恐怖心を煽られる……。
しかも死ぬまでの3日間、激しい痛みが全身を襲うので、それだけでおかしくなってしまいそうだ。ラオウはこの技をいろいろな武芸者に使い、死への恐怖を与えて拳王の名を世に広めようともしていた。
おまけに解除の方法はないので、突かれてしまうとその時点で終わりである。レイもその効果から逃れられず、最終的には部屋の中でひとり息絶えてしまった。
死ぬまでの猶予を与えられるというのが、この技の嫌なところだろう。死ぬことは確定しているしどうしようもないのに、時間だけがあると思うと無慈悲すぎる。北斗神拳は瞬間的な破壊が多いのに、この技だけ絶妙に時間を与えられるから憎らしい。
■少しずつボロボロになる恐怖…『ジョジョの奇妙な冒険』チョコラータのグリーン・ディ
最後は荒木飛呂彦さんによる『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部に登場したチョコラータのスタンド能力を紹介したい。
チョコラータは敵キャラの中でもかなり残忍な性格の持ち主で、死や痛みを観察することに至上の喜びを覚えている。罪悪感もなく自身の興味や趣味のために殺しをする、とんでもない人物だ。
そんなチョコラータの使うスタンド「グリーン・ディ」は、彼の凶悪性をそのまま具現化したかのような存在だ。その能力は生物を食人カビで襲い、肉体を崩壊させるというもの。
少しずつカビ化していく様子は、見ていても味わいたくないと思ってしまった。しかも広範囲に影響を及ぼすので、能力から逃れるのも難しい……。
カビの侵食は、体を最初にいた場所から少しでも下げることで起こる。そのためすぐには気づけないし、何気ない動きひとつでカビ化が始まるのだ。
そんな些細なきっかけで少しずつボロボロにされていくことで、恐怖を煽るのは間違いない。カビ化の侵食を止めるためには動かないか、上の場所へと移動するしか方法がないので、戦闘中には八方塞がりとなってしまう。
少年漫画に登場する悪役キャラは、存在を際立たせるために能力や技にも怖さが表れていることがある。使ってみたいと憧れるタイプではないかもしれないが、インパクト十分なのは間違いない。