■ドラえもんがジャイアンを「暴力」で制圧!
ドラえもんの様子がおかしくなってしまうエピソードもある。「ドラえもんの歌」の回は、ジャイアンの音痴をネタにした最初期の作品だが、ここではドラえもんのさらなる音痴っぷりと不穏な行動が描かれている。
ジャイアンの「どく唱会」におびえるのび太のため、ドラえもんは「音の消えるマイク」を持って空き地に駆けつける。だが、その帰り道のドラえもんの様子がおかしい。突然歌を歌いはじめると、ジャイアンよりひどい音痴なのだ。
のび太に音痴を指摘されたドラえもんは憤慨し、「きみならげいじゅつがわかるだろ」とジャイアンの家を訪れる。ドラえもんの歌を聴いたジャイアンは怒り出すが、逆ギレしたドラえもんは暴力で制圧。ジャイアンをボコボコにして踏みつけ、「げいじゅつのわからんやつは人間じゃないっ」と吐き捨てる。
このあたりからドラえもんの目つきが尋常ではなくなっていく。歌声もどんどん酷くなり、「ボエ~」「ゲボ~」と歌うだけで窓ガラスが割れ、物が次々と落下した。
その夜、自分のリサイタルを開こうとするドラえもんは、ジャイアン、スネ夫、しずかたちをリモコンで操って無理やり空き地に集合させる。シルエットで表現された、おびえながら歩かされる子どもたちと、目が飛んでしまったドラえもんの姿が恐ろしい。スネ夫は警察に通報しようとするが、当然、警官もドラえもんの敵ではない。
いよいよ「ドラえもんリサイタル」が開催されるが、のび太がセワシを連れて現れると、セワシは光線銃でドラえもんを一撃。帰宅して分解すると、体からマツムシが飛び出した。
どうやら口に飛び込んだマツムシがドラえもんの電子頭脳に入り、おかしくなっていたようだ。ドラえもんがその気になれば、街が一瞬で制圧されることが分かる(ふとしたトラブルで発生しうることも判明)恐ろしいエピソードだった。
なお、ドラえもんがおかしくなると冷静沈着に行動して、事態を収拾するのび太の優秀さにも注目したい。
これらの未収録回は『藤子・F・不二雄大全集』(小学館)で手軽に読むことができる。「てんとう虫コミックス」に収録されていない、『ドラえもん』の知られざるエピソードを存分に味わってほしい。