■戦いに没頭し闇落ち寸前の丈瑠…そんな彼を救ったのは?
最後に、本作屈指の名バトルシーンを紹介したい。それは第46話「激突大勝負」と第47話「絆」での、シンケンレッドと腑破十臓の死闘だ。
影武者としての役割を終え失意のなかの丈瑠。そんな彼の前に現れたのが因縁の相手・十臓だった。「シンケンレッド…いや違うらしいな だがそんなことはどうでもいい! 俺と戦う お前はそれだけで十分だ」という十臓の言葉に応え、丈瑠は戦いのなかに自分の存在意義を見出そうとする。その後、戦隊モノでは非常に珍しい馬上での戦いなど、2話におよぶ壮絶な戦闘シーンが繰り広げられる。
そして十臓との死闘の果てに戦いの快楽に溺れ、闇堕ちしそうになる丈瑠。そんな彼を救ったのが、ほかの4人のシンケンジャーたちであった。
彼ら4人も侍として自身のあるべき姿に苦しみながらも、かつて殿と慕いともに戦った丈瑠のもとに駆けつけたのだ。丈瑠は偽りの当主であったかもしれないが、ここまで仲間たちが築き上げてきた絆までは嘘ではなかったことが示されるシーンに、思わず涙するファンも多かっただろう。
ちなみに、このことを通じて大きく成長を遂げた丈瑠は、その後、志葉家に養子として迎えられ、名実ともに真のシンケンレッドとなり最終決戦に挑むことになった。
『侍戦隊シンケンジャー』は“侍”をテーマにした和風テイストたっぷりの戦隊作品であり、主人公・シンケンレッド/志葉丈瑠はカリスマリーダーでありながら、実は影武者だったという衝撃的な設定のキャラクターであった。
そして本作が俳優デビューとなる松坂さんは、この複雑な役どころを見事に演じ切り、視聴者に鮮烈な印象を残した。『侍戦隊シンケンジャー』は、松坂さんのキャリアの原点として語り継がれる名作なのである。