『スケバン刑事』に『エースをねらえ!』、『小さな恋のものがたり』も…どう終わった? 実は知らない「名作昭和少女漫画の最終回」の画像
プリンセス・コミックス 新装版『スケバン刑事』第1巻(秋田書店)

 幾多の名作少女漫画が誕生した昭和の時代。ドラマ化や映画化などメディアミックスがおこなわれ、現在でも話題となる作品や、親から子へと世代を超えて読み継がれる作品も多くある。

 しかし、そのような昭和の名作の最終回がどのように終わったのかを知る人は意外と少ないかもしれない。なかには予想外の展開で幕を閉じ、当時の読者を驚愕させた作品もある。

 今回は、昭和を代表する王道少女漫画の最終回について振り返ってみよう。

■ドラマ化でヨーヨーも社会現象に!『スケバン刑事』

 和田慎二さんによる『スケバン刑事』は、1975年から82年にかけて『花とゆめ』(白泉社)で連載された作品だ。85年には斉藤由貴さん主演のドラマが大ヒットし、その後も南野陽子さん、浅香唯さんによる続編も人気となった。

 そもそも『スケバン刑事』は、スケバンの麻宮サキが母の減刑を条件に暗闇警視の依頼で学生刑事となり、海槌麗巳や信楽老といった巨悪と戦う物語である。

 そんな原作漫画の結末は衝撃的だった。信楽老との最終決戦で、サキは複雑な関係にあった母・ナツを失う。ナツは最後に母親としてサキを守り、命を落とすのだった。

 さらにサキを救ったのは、愛する男・神恭一郎が死に際に放った一発の銃弾だ。サキはこれにより信楽老をヨーヨーで射貫き倒すも、愛する神の名を叫びつつ倒れてしまう。

 時は流れ、高校の卒業式に姿を現したサキ。無事に卒業証書を受け取った彼女はヨーヨーを空高く投げて「みんな! あばよ!」と叫び、その場を去った。

 しかし、その後学校を訪れた特務員・ムウ=ミサにより真実が明かされる。実はサキは半年前の信楽老との戦いで命を落としていた。つまり卒業式に現れたのはサキの幻だったということだ。担任は涙ながらに“卒業証書を受け取るために、ここに来たんだな…”と呟く。そうして物語は幕を閉じるのであった。

 『スケバン刑事』は派手なアクションが注目されがちだった。しかしサキが大事にしていたのは学生であることと、仲間を深く愛する心であったのだ。最終回で彼女が学校を卒業するのは、サキ自身が学生としての自分や仲間たち、そして学校そのものを大切に思っていることを象徴していたのだろう。

■2人のコーチによって成長したラスト『エースをねらえ!』

 『エースをねらえ!』は、山本鈴美香さんによるテニス漫画だ。1973年から『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』集英社)で連載がはじまり、テニス漫画の金字塔としても有名な作品である。

 『エースをねらえ!』といえば、主人公の岡ひろみをはじめ、豪華絢爛な“お蝶夫人”、高身長エース“加賀のお蘭”、厳しいコーチ・宗方の指導、その宗方の突然の死……そういった描写が印象的だ。だが、原作漫画における最終回は次のようである。

 宗方の死後、宗方の親友・桂大悟のもとで再びテニスを始めたひろみ。ウィンブルドン大会の女子選手には、お蝶夫人、お蘭、ひろみの3人が選出され、1枠を争う。結果、お蝶夫人は足の故障により出場を断念。お蘭との激闘の末、ひろみが勝ち抜いた。ひろみは最後に最大のライバル2人を超え、見事に栄冠を手にしたのである。

 そしてひろみが日本を経つために飛行機のタラップをのぼろうとした時、「岡」という声が聞こえる。そこには桂がいた。そして彼は「エースをねらえ!」と叫び、ひろみはそれに「コーチー!!」と応え、叫ぶのであった。最終ページは宗方と桂の両コーチが「エースをねらえ!」と、ひろみに呼びかけるシーンで終了している。

 ちなみに宗方が亡くなるシーンでも、ひろみが飛行機のタラップをのぼる途中で「岡!」という声が響き、ひろみが振り向く場面が描かれている。さらに、タイトルにもなっている「エースをねらえ!」という言葉は、宗方がひろみに託した遺言だった。

 最終話でも同様のシーンが繰り返され、その言葉がひろみを成長させた2人のコーチによって伝えられるシーンは、まさに粋な演出と言えるだろう。

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