■超高速タイピングでOSを書き換え?

 アニメ『機動戦士ガンダムSEED』の主人公である「キラ・ヤマト」も、初陣の行動で視聴者を驚かせた主人公のひとりだ。

 物語は、秘密裏に開発されていた5機のガンダム奪取を狙うザフトが、中立だったキラたちのコロニーに対して攻撃を開始するところから始まる。

 キラはその戦火から逃げるなかで、ガンダム開発担当の技術士官「マリュー・ラミアス」と一緒に、なし崩し的に「ストライクガンダム」のコクピットに放り込まれる。当初ストライクを操縦したのはマリューだったがまともに扱えず、歩行もままならない状態だった。

 それを背後から見ていたキラが、我慢しきれず、「ムチャクチャだ、こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて」と、軍の最高機密の問題点を指摘する。

 そしてマリューを押しのけてストライクのコクピットに座ると、敵の攻撃をいなしながら、超高速タイピングでOSを書き換えることに成功。生まれ変わったような動きを見せるストライクで、見事敵機を撃破したのである。

 のちに分かることだが、キラは遺伝子操作を受けて生まれた「コーディネーター」だ。さらに「MG 1/100 エールストライクガンダム」の取扱説明書によれば、キラの所属ゼミの教授であるカトウ教授がガンダムのOS開発に携わっており、キラは部分的にそのシステムを知っていた可能性もある。

 とはいえ、いくらキラがコーディネーターならではの明晰な頭脳を持ち、OSの情報をつかんでいたとしても、機体のOSを書き換えるためにガンダムのコクピットに座ったのはキラが初めて。しかもOS書き換え時の高速タイピングと専門用語の羅列は、リアルタイムで視聴していたガンダムファンに新時代の到来を予感させた、衝撃的なデビューだった。

 

 ガンダムに搭乗することになった理由は三者三様だが、それぞれ方向は違えど、とんでもない理由ばかりだ。やはりガンダムに搭乗するのは特別なことで、忘れがたいシーンばかりである。いきなり「OS書き換え」という凄技を披露したキラもすごいが、セイラやカミーユのように完全に私的な理由で、堂々とガンダムに乗り込めるのも相当肝が座っているように思える。

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