■桜木の成長を支え続けた影の功労者

 水戸たち桜木軍団は、試合観戦もマメだ。陵南の練習試合から毎回のように会場に足を運び、桜木を応援し続けている(ヤジは多めであるが……)。友達の応援とはいえ、なかなかできることではないだろう。インターハイ出場の際には、地元神奈川から会場である広島まで駆けつけるほどの熱心さだ。

 試合中にも、桜木の気持ちをよく理解している水戸の姿がある。たとえば海南戦、牧紳一にインテンショナルファウルを受け、水戸は「こっからの花道は見ものだぜ」と桜木の奮起を予測。

 また、陵南戦で桜木が福田吉兆に完膚なきまでに叩きのめされると「花道にとっちゃ人生でワースト3に入るくらいの屈辱だ」と、桜木の悔しい気持ちを誰よりもよく分かっていた。

 さらに水戸たち桜木軍団は試合だけでなく、練習の場にも顔をよく出していた。“2万本のシュート練習”でもパスやビデオ回しと1週間泊まり込みで桜木の個人練習を手伝い、晴子も一緒に2万本をやり遂げている。豊玉戦でジャンプシュートを決めた桜木に「母鳥の心境だ」と、みんなでガッツポーズをする場面も名シーンだった。

■山王戦での印象的な名セリフ

 最後に、山王戦での水戸の印象的な言葉を紹介する。

 試合終盤、それまで圧倒されていた流川が鋭いドライブで沢北を抜き去り、“今日イチ”のプレイを見せる。だが、その進路に入ってしまい台無しにしてしまう桜木。それを責めるような会場の雰囲気に針のムシロとなったうえ、そしてトドメとなる「おめーのヘマは もともと計算に入れてる………つっただろ ど素人」という流川の一言に、ブチ切れてしまう。

 しかし桜木は、自身の頬を引っ張り必死に怒りを抑えた。その姿を見て「…かつての花道なら 絶対 殴ってるよ」「あいつ…大人になったな」と、高宮たち桜木軍団は感心するのだが、ここで水戸は「いや… そうじゃねえ…… バスケット選手になっちまったのさ…」と付け加えた。

 中学生からの親友であり、その成長をそばから見守り続けた水戸だからこその言葉だろう。そのときの誇らしそうで、少し寂しそうな表情の水戸が忘れられない。

 

 今回は『SLAM DUNK』に登場する水戸洋平について振り返ってきた。水戸は桜木の唯一無二の親友であり、良き理解者であった。練習や試合にもたびたび姿を現し、時にはその腕っぷしの強さで桜木を救っていた。

 水戸は桜木を誰よりも近くで見守り、そして誰よりもその成長を喜んでいたに違いない。水戸はバスケ選手ではないものの桜木を成長させ、湘北躍進に貢献した影の立役者と言っていいだろう。

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