■オーディションで眉と頭を剃って挑んだ『ピンポン』ドラゴン役の中村獅童さん
『ピンポン』は2002年7月に公開された映画だ。原作は松本大洋さんの同名漫画で、幼い頃から卓球に親しむ高校生、ペコとスマイルによる卓球をテーマにした青春ストーリーである。
本作の主演・ペコを演じたのは窪塚洋介さん、そしてその対戦相手となる卓球名門校のエース・ドラゴンこと風間竜一を演じたのが、中村獅童さんだった。
原作漫画でドラゴンは強面のスキンヘッドとして描かれている。そのビジュアルは映画でも忠実に再現されており、中村さんは本作のオーディションに臨む時点で頭と眉毛を剃り落とし、ドラゴンそのものになってこの役を勝ち取ったそうだ。
圧倒的な迫力でドラゴンを演じ切った中村さんは、その演技が高く評価され、第26回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。
ちなみにその後、映画『首』の監督を務めた北野武さんは、『ピンポン』で眉と頭を剃り込んだ中村さんの演技にかける思いがすごかったことから、彼を出演者に選んだと明かしている。
■声や目つきまでアニメにそっくり、生瀬勝久さんの『ヤッターマン』ボヤッキー
『ヤッターマン』は昭和に大人気を博したタツノコプロ原作のアニメである。本作は2008年にアニメがリメイクされ、翌年には櫻井翔さん主演で実写映画が公開された。
登場人物はすべてアニメキャラを忠実に再現していたが、なかでも注目されたのがボヤッキーを演じた生瀬勝久さんだ。ボヤッキーは悪党一味の一人で、コミカルかつ非現実的な外見を持つキャラクターだ。この難しい役を、生瀬さんは見事にそのままの姿で再現している。
付けヒゲや付け鼻といった特殊メイク、さらにツノが生えたヘルメットと緑色のセットアップをまとい、まさにボヤッキーそのものと言えるルックスを再現した生瀬さん。また、演技面でもアニメの雰囲気を忠実に再現しており、ギョロリとした目つきや滑稽な動きで観客の目を惹きつけた。
さらに、ボヤッキーの代名詞とも言える名台詞「ポチっとな」を、生瀬さんは特徴的なダミ声を用いて演じている。アニメのボヤッキーをそのまま実写で生き返らせたような生瀬さんの演技は、映画における見どころの一つだろう。
今回ご紹介した俳優たちは、まるで原作漫画やアニメのキャラクターがそのまま現実に飛び出したようなビジュアルだった。
今では特殊メイクやCG技術の進化により、原作キャラの再現も可能ではあるが、それだけでは完璧な演技は生まれない。キャラクターをそのまま演じ切るには、俳優自身の演技力と表現力が不可欠であり、それこそが観客を引きつける真の魅力となっているのだろう。