■自分が認めた存在によって、しがらみから解放
そんなハマーンにとって救いとなったのがジュドー・アーシタの存在だと考えられる。ハマーンは戦闘中に何度もジュドーを自分のもとに誘っていたことから分かるように、彼を特別視していた。この状況は『Zガンダム』のときに、シャアに呼びかけていたときにも似ている。
それがシャアに対する想いと同じものなのかは分からないが、少なくとも彼女の心に空いた穴を埋める存在としてジュドーを求めていたことは想像がつく。
そしてジュドーの存在が、最後にハマーンを救ったのも間違いない。ジュドーは、ハマーンに対して「憎しみを生むもの、憎しみを育てる血を吐き出せ!」といい、ハマーンは「吐き出すものなどない!」と答えている。
この言葉はハマーンの強がりではなく、すでにジュドーと出会ったことで「(結果として)吐き出した」という意味とも考えられた。
実際、ジュドーのZZガンダムに敗れた際、ハマーンは潔く負けを認め、とても晴れやかな笑みを浮かべていた。少なくとも彼を恨むような表情ではない。特別な存在と感じていたジュドーに一騎打ちを挑み、その結果すべてのしがらみから解放されたことで、はじめて穏やかな気持ちになれたのかもしれない。
ハマーン・カーンという女性は、いわば作品のラスボスのような立ち位置でありながら、時折人間的な弱さを隠しきれない点が魅力だった。まだ少女だった頃から人の上に立たされ、22歳の若さで散った彼女が、本当の幸せをつかむ世界線も映像作品で見てみたいものだ。