1月10日は「ハマーン・カーン」の誕生日…宇宙世紀ガンダム「史上最強の美女」の“秘めたる内面”とはの画像
小説『機動戦士Zガンダム 第4部 ザビ家再臨』(KADOKAWA)書影より引用

『ガンダム』作品の宇宙世紀シリーズにおいて、強い女性の代名詞でもあった「ハマーン・カーン」。ファンのあいだでは「ハマーン様」の愛称で呼ばれ、その人気は根強い。

 1月10日は、そんなハマーンの誕生日。作中で、過去にシャアと親しい関係だったことがほのめかされるが、女傑と呼ばれる彼女のプライベートな部分はあまり描かれていない。

 しかし、アニメをじっくり見返すと、ハマーンが内に秘めていた感情があふれ出たシーンも存在する。そこで今回は、ハマーンの内面がうかがえる描写を振り返りつつ、彼女のパーソナルな部分を掘り下げていきたい。

 ただし、作中でダイレクトに語られる場面は多くないため、筆者の推察が大いに含まれていることをご留意いただきたい。

■「ともに未来を創りたかった」ひとりの女性としての想い

 ハマーンは、アクシズの指導者として組織を指揮する立場にあったためか、自身の内面を吐露するような場面は少なかった。そんなハマーンにとって、最大のパーソナルな部分といえば、やはりシャア・アズナブルとの関係性だろう。

 テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の作中で、かつてハマーンとシャアは相当親しい関係だったことがほのめかされている。その象徴ともいえるのが、私服姿のハマーンがシャアの肩に両手を乗せて寄り添う写真の存在だ。

 ハマーンとしては、シャアとともに新しいジオンを創りたかったに違いない。実際『Zガンダム』内ではハマーンが、シャアに対して自分のもとへ戻るよう呼びかけるシーンもあり、彼女のほうに未練があったのは察することができる。

 もちろん、それは彼女の感情的な面だけではなく、政治的な意味も大きかったはず。一年戦争時代のシャアの存在感は無視できず、当然求心力は高い。事実ダカールでの演説で、クワトロ・バジーナが「シャア」として語った言葉は、世界的な話題となっていた。

 だがハマーンの心の奥底にあったのは、やはり恋心だったのではないだろうか。『Zガンダム』の最終話「宇宙(そら)を駆ける」の中で、ハマーンと交戦していたシャアの百式が爆発に巻き込まれたのを目撃した際、「シャア、私と来てくれれば……」とつぶやき、苦悶の表情を浮かべていたのが忘れられない。

 交戦中のやりとりを振り返ってみても、殺したくないという彼女の本音が見え隠れしていた。いくらアクシズの女傑と呼ばれようとも、まだ20歳の若き女性だったのだから……。

■常に孤独にさいなまれ、苦悩していた!?

 グリプス戦役でティターンズとエゥーゴが激突し、両陣営は戦力を消耗。結果として、そこにつけ込むかたちで本格的に侵攻したのが、アクシズから名を改めた「ネオ・ジオン」だ。

 シャアを失ったハマーン(実際は生存していたが、彼女はそう思い込んでいた)は傷心だった可能性もあるが、少なくともテレビアニメ『機動戦士ガンダムZZ』ではその様子は見られなかった。

 しかし、彼女が孤独と戦っていたのは容易に想像できる。そもそもハマーンはずっと孤独を感じ続けていたのではないだろうか。

 稀代のニュータイプ能力を持ち、パイロットとして高い適性も有し、政治的な手腕にも長けていた。弱冠16歳でアクシズの指導者に就いたほどだ。おそらく、その才能を疎むものも少なからずいただろう。

 そのうえ、ひそかに想いを寄せていたシャアが離れてしまった。「誰も理解者がいない」という思いが、ハマーンの心を歪ませてしまったとも考えられる。

『ガンダムZZ』の最終話「戦士、再び……」でハマーンとジュドー・アーシタの交戦中、戦場で散った人々の意思がジュドーのZZガンダムを助ける力となるのを目撃する。しかし、ハマーンはそれを認めず「人は生きる限りひとりだよ」「人類そのものもそうだ!」という持論を述べた。

 このセリフにはハマーンがこれまでたどった人生やその悲しみが表れているようで、何度観ても心に響く……。

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