「ジオン公国が勝つ未来はあった?」機動戦士ガンダム「一年戦争」のターニングポイントを考察  ブリティッシュ作戦、ルウム戦役、オデッサ作戦…の画像
DVD「機動戦士ガンダム THE ORIGIN V 激突 ルウム会戦」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の舞台となった「一年戦争」。宇宙世紀0079年1月3日に開戦し、宇宙世紀0080年の1月1日に終戦となったことから一年戦争と呼ばれている。

 これは、宇宙にあるコロニー群のひとつ「サイド3」がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対してしかけた独立戦争だ。その結果はご存知のとおり、ジオン公国側の敗北に終わる。

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』は、主人公のアムロ・レイが「ガンダム」に乗り込むところから始まるが、これは0079年9月の出来事であり、終戦まで約3か月しかなかった。

 それでは、ジオン公国側がこの戦争に勝利、あるいは連邦政府に最大限譲歩させるかたちで講和に持ち込むことはできなかったのだろうか。一年戦争の趨勢を振り返りつつ、ジオンが勝利を逃す要因となったと思われるターニングポイントを筆者の独断で考察してみたい。

■恐怖のコロニー落としが行われた「一週間戦争」

 0079年1月3日にジオン公国軍は地球連邦政府に宣戦布告し、そのわずか3秒後には宇宙の連邦艦隊、および月面都市グラナダ、ジオン公国に与しないサイド1、サイド2、サイド4に攻撃を開始。またたくまに撃破、制圧する。

 翌1月4日、ジオン軍は即座に次の行動に移る。毒ガスによって住民を虐殺したサイド2コロニー「アイランド・イフィッシュ」に核パルスエンジンを装着し、地球に落下させるという非道な作戦を実行した。

 これが「ブリティッシュ作戦」であり、通称「コロニー落とし」と呼ばれる戦略攻撃だ。目標は地球連邦軍の総司令部が置かれたジャブロー基地であり、この一撃によってジオン軍は戦争の早期決着を狙ったのである。

 だが、これを察知した地球連邦軍は、艦隊からの艦砲射撃と核ミサイルによる攻撃でコロニーを損傷させることに成功。ジャブローへの落下は避けられたが、空中分解したコロニーの前端部分がオーストラリアに落ち、人類は甚大な被害を受けることとなった。

 このコロニー落としが狙いどおりに成功していたら、ジャブローは機能を失った可能性が高く、連邦軍の指揮系統は麻痺したことだろう。

『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(講談社)によれば、このときジャブロー基地はコロニー落下を察知した大量の将兵が脱出を試みていたという。ジャブロー上空は航空機で埋め尽くされ、この混乱に乗じてジオンが地球侵攻を行っていたら勝利は確実なものにできたとの記載もあった。

■大勝した「ルウム戦役」、そして幻となった休戦条約

 ジャブロー基地の破壊に失敗したジオン軍は、再度コロニー落としを実行すべくサイド5のコロニーを狙って進軍する。

 この動きを知った地球連邦軍のレビル将軍率いる連邦艦隊は、阻止するために進軍。1月15日に両軍はルウム宙域で激突した。これが「ルウム戦役」と呼ばれる戦いである。

 ジオン軍は戦力比的には劣っていたが、ジオン側がモビルスーツを投入したことにより状況は一変する。モビルスーツ「ザク」の活躍と、ミノフスキー粒子による有視界戦闘に苦戦した連邦サイドは、艦艇の約80%を喪失するという大敗を喫した。

 さらに被弾した旗艦から脱出を図ったレビル将軍が、ジオンの「黒い三連星」によって捕獲されてしまう。連邦屈指の名将がジオンの捕虜となり、想像もしない大敗を喫した地球連邦サイドには厭戦ムードが漂い、早期講和の声が高まることになる。

 1月31日、中立であるサイド6を仲介役にして、南極において休戦交渉の席が設けられた。勢いに乗るジオン側が連邦に突きつけた条件は、事実上の降伏勧告である。弱腰の地球連邦政府が条件受け入れに傾くなかで、レビル将軍の奪還が伝えられたのである。

 捕虜だったレビルを奪還したのは連邦の特殊部隊だが、その裏では戦争を継続したいジオン側の思惑も蠢いていた。

 救出されたレビル将軍は全地球圏に向けてジオン軍の疲弊を伝え、「ジオンに兵なし」いう名演説を行い、徹底抗戦を訴える。その結果、休戦協定ではなく核の使用やコロニー落としなどを禁じる南極条約が締結され、戦争はますます泥沼化していくのである。

 もしもレビル将軍の奪還が失敗、いや、あと数日でも遅れていたら、ジオン側の事実上の勝利で戦争は終わっていた可能性は大いにある。

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