■最強の鬼が手も足も出ない…『鬼滅の刃』継国縁壱

 吾峠呼世晴氏による漫画『鬼滅の刃』。累計発行部数は1億5000万部を突破し、社会現象にまで発展した大人気作だ。

 作中には、鬼舞辻無惨を首魁として夜闇に紛れて人の血肉を食らう「鬼」が出現し、それを討伐せんとする「鬼殺隊」との激突が描かれている。

 そんな中、主人公・竈門炭治郎が夢の中で見た先祖の記憶の中で初めて登場したのが、「継国縁壱」だ。作中の時間軸ではすでに故人ではあるが、現在鬼殺隊で用いられているすべての呼吸法のベースとなった「日の呼吸」の生みの親であり、その大本を築いた礎的な存在なのだ。

 性格は穏やかで思慮深く、周囲からも「物静かで素朴な人だった」と語られるほどであり、おおよそ苛烈な戦場には似つかわしくない人格者だったようだ。

 しかし、身体機能が極限に至ったことを示す「痣」と、相手の内臓の動きすら見通す「透き通る世界」を生まれながらに会得していたという、神に愛されたかのような能力を有していた。

 剣の才は途方もなく、剣を習っていた兄の巌勝が勝てなかった剣術指南役を、初めて竹刀を握った縁壱が倒してしまったことも。

 その後、鬼狩りとなった縁壱が、原初にして最強の鬼たる鬼舞辻無惨と対峙した際も、何もさせずに瞬く間に切り刻んで圧倒。今もなお消えない恐怖の記憶を刻み込んだ「耳飾りの剣士」となる。

 老いて80歳を超えても寸分も衰えない剣の冴えを維持し、上弦最強の鬼となった実兄を一瞬にして追い詰めるほどだった。

 物語のラスボスである鬼舞辻無惨から「本当の化け物はあの男だ。私ではない!!」 と言われ、上弦の鬼・黒死牟となった兄からは「お前になりたかったのだ」 と言われるほど圧倒的な強さを誇った縁壱。

「全集中の呼吸」を生み出し、鬼殺隊に伝わる「五大流派」を考案・指南したこと、ヒノカミ神楽=日の呼吸の存在まで含め、後世に多大な影響を及ぼした、まさに無敵の強者である。


 厳しい修行の末に少しずつ成長を遂げ、最終的に最強の実力者となる展開は少年漫画にありがちだが、最初から最後まで作中最強の存在として君臨するキャラクターにも惹かれる。

 あまりにも隔絶した実力を持つために作者すら扱いに困らされることもあるようだが、その底の見えない圧倒的な力もまた、魅力的な要素といえるだろう。

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