■「ミンミンゼミ」で高音をゲットだぜ!

 そして、先生は苦心する私に、打開策として「ミンミンゼミ発声法」を伝授してくれた。これは単純に「ミンミンゼミ」のモノマネをするトレーニングだ。

 実は「ミンミンミン!」という発音は高音の練習にうってつけとのことで、ひたすら「ミンミンミン! ミンミンミン!」と言いながら、高音を出す練習に励む。確かに声が低い「ミンミンゼミ」なんて聞いたことないもんな。

 ところが、「ミンミンゼミ発声法」をやってみても、どうしても声が出ない! 思わず悔しさに駄々を踏んでしまう、齢30歳女。四苦八苦していると、先生は「恥骨(下腹のあたりの骨)の少し上にあるインナーマッスルを体の軸として意識してみてください」とアドバイスしてくれた。

 しかし最近、順調に太りゆく私。ちょっと下腹を触ってみるが、触れる限り、骨っぽいところがない。「恥骨ってどこすか? 下腹に肉しか感じられず……」と恥を忍んで聞いてみると、これも快く教えてくれた。手がかかる生徒ですみません。

 まず、床に横になってリップロール(息を吐いて唇をプルプル)しながら上体を起こしてみる。すると初めて、恥骨の少し上にあるインナーマッスルを感じられた。「あ、ここか~!」と思いながら嬉しくて立ち上がると、インナーマッスルは消えてしまった。インナーマッスルは立つと消えてしまう、いじらしい存在らしい。私が太りすぎている可能性は大いにあるが。

寝っ転がってリップロールして「恥骨の上のインナーマッスル」を確認、ここに力を入れるイメージで歌うのが肝心

 ただ、大事な場所は分かったので、歌う際にはインナーマッスルも参加させるくらいの気持ちで「下腹に軸を置く」をイメージ。いつも「歌う時、みんなどこに力入れてんだろ~」とぼんやり思っていたのだが、なんとなく下半身を軸にして歌う感覚が分かってきた。先生いわく、世の中でよく言われる「腹から声を出す」ということより、「恥骨の上のインナーマッスル」を意識したほうがよいそうだ。たしかに腹から声は出ない。

 生まれて初めて自分の「下腹」を触りながら歌ってみた。なんか照れたが、ちょっと歌いやすくなったので良しとしよう。

 みんな、歌う時に軸とするのは、「恥骨の上のインナーマッスル」だぞ。音痴仲間は覚えておこう。さあ、次はいよいよ最終レッスン「上級編」です! 【第3回につづく】

こちらが「よーこてんてー」。都内でアニソン特化のボイトレ教室を開いている。

よーこてんてー
ボイストレーナー歴約13年。これまでにのべ15000人以上の声を聴き、ボイストレーニングを提供。現在も月に約100名の受講生を抱え、近年ではアーティスト・声優・VTuberを中心に出張ボイストレーニングやライブ帯同など幅広い現場で活躍中。アニソンに特化した専門性と、科学的アプローチを組み合わせた指導により、多くの受講生やプロフェッショナルから信頼を得ている。

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