■あまりにもカッコイイ必殺技「積尸気冥界波」と「ハーデス編」での描写
いくつもの技を持つ聖闘士が多いなか、本編におけるデスマスクの必殺技といえば「積尸気冥界波」の一本だけなのが実に潔い!
蟹座の散開星団「プレセペ」は中国では「積尸気」と呼ばれ、積み重ねた死体から立ちのぼる鬼火の燐気を意味しているという。死者の顔に埋め尽くされた巨蟹宮、その主人であるデスマスクのキャラクター性とピッタリ符合する、実にカッコイイ技だ。
右手の人差し指を天(敵)にかざし、「積尸気冥界波ーっ!」と叫ぶ姿は、黄金聖闘士としての威厳に満ちていた。
さらに「積尸気」とは、地上の霊魂があの世(冥界)に行くための通り道だと得意のウンチクを二度も語り、デスマスク自身も冥界の入り口まで行って、紫龍を「黄泉比良坂」に落とそうとした。
つまり「積尸気冥界波」という技により、デスマスクは自分の意思で冥界に出入りできるということ。これは神にも匹敵するようなトンデモない能力だ。
そして冥界の神といえばハーデスだが、“あの世”でも蟹座のデスマスクと魚座のアフロディーテの“魚介類コンビ”は、裏切り者としてがんばっていた。
だが、冥界を自由に往復できるであろうデスマスクは、本当にハーデスの下で使い捨ての駒として消費されるだけの存在だったのだろうか。
嘆きの壁での蟹座の聖衣との和解、他の黄金聖闘士と同じ場所に墓標があったことなどを踏まえると、いちファンとしてはさまざまな可能性を考察せずにはいられない。
■外伝作品でのデスマスクの雄姿
最後に、車田正美先生の本編以外の作品にも少しだけ目を向けてみたいと思う。
秋田書店の『チャンピオンRED』に掲載されていた、岡田芽武先生の『聖闘士星矢EPISODE.G』では16歳の姿で登場。スタイリッシュな絵柄と年齢の若さも相まって、かなりのやんちゃキャラになっていた。
「オレは相当 邪悪だゼ?」「殺し合いだゼ」など、文末に片仮名の“ゼ”を使うのがお気に入りのようである。
後の『聖闘士星矢EPISODE.G アサシン』においては、聖域の命令とは言えヒロイン火野吉乃を護衛し、彼女から“良い人認定”されていたのは驚きだった。
なお、2014年に公開されたフルCGアニメ映画『LEGEND of SANCTUARY』での別人のようなむさ苦しいヒゲ面にひっくり返り、2015年にWEBアニメとして放送された『聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold-』で展開されたデスマスクのラブロマンスには本気でのたうち回った。
『聖闘士星矢』30周年公式サイトでも「戦いと殺戮を正義とする聖闘士にあるまじき卑劣な一面を持つ」と、しっかり“卑劣な一面”を強調されていたデスマスク。悪でありながらも、さまざまな魅力を秘めているのが彼の特徴なのだ。最近ではこういった外伝作品や、パチンコなどの影響もあって注目を集めることも多くなったが、これからもデスマスクの良さを探求し続けたいと思う。