長期にわたるアニメ放送の中では、原作には存在しないサイドストーリーが描かれることがある。そういったアニメオリジナルの展開は、どうしても設定的に違和感があったり、小さな矛盾が生じたりと、否定的な声もあがりやすい。
そして鳥山明氏の国民的作品をアニメ化した『ドラゴンボールZ』にも、いわゆるアニオリ展開は数多く描かれていた。しかし、同作のアニメオリジナルのエピソードの中には、あまりにもインパクトがありすぎて、いまだに語り継がれている「伝説回」が存在することをご存知だろうか。
■伝説の教習所回「免許皆伝? 悟空の新たなる試練」
その1つが、第125話「免許皆伝? 悟空の新たなる試練」だ。この回は、悟空とピッコロが車の運転免許を取りに行くというオリジナルエピソード。おそらくは漫画『ドラゴンボール』の扉絵に描かれた、悟空とピッコロが教習車を運転中のイラストから着想を得たストーリーだと思われる。
まず、教習所を訪れたピッコロの私服姿があまりにも衝撃的だった。派手なアウターにデニム風のパンツをあわせたカジュアルすぎるファッション。しかも彼がかぶっているキャップには「GOKUU」という文字がデカデカと刺繍されていたのもシュールだ。
そしてピッコロの車に同乗した女性教官は、ハンドルを握った瞬間に性格が豹変してピッコロはドン引き。物覚えの悪い悟空は、進行方向を間違えて事故を起こしたり、対向車線を猛スピードで逆走したりとハチャメチャな運転を続ける。さらにはハンドルを切れと言われ、手刀でハンドルそのものを切断してしまうのも悟空らしいハプニングだ。
一方、真面目に教習を受けていたピッコロは、悟空の車に強引に追い抜かれてカッとなり、ふたりは壮絶なカーチェイスを開始。全速で激突すると、ふたりの車は大炎上した。
その後、路上試験を受けることになるが、前を走る幼稚園児の乗ったバスが土砂崩れに巻き込まれ、悟空とピッコロは車を飛び出し、崖下に転落するバスを救出するのだった。
結局ふたりは免許を取ることができず、家に帰ってからチチに激怒されてしまう。この回は、テンポの良いギャグシーンが満載で、記憶しているファンも多いことだろう。
■悟空の父の雄姿を描いたテレビスペシャル「たったひとりの最終決戦」
テレビスペシャルとして放映されたエピソードとしては、「たったひとりの最終決戦」と、パラレル未来編の「絶望への反抗!! 残された超戦士・悟飯とトランクス」のどちらも捨てがたい。今回は、アニメオリジナルのエピソードだった「たったひとりの最終決戦」に焦点を当てていこう。
この物語の主人公は、孫悟空の実の父親であるバーダックだ。サイヤ人の歴戦の戦士であるバーダックは、カナッサ星人の特殊能力によって、フリーザの手で惑星ベジータが消滅させられる未来予知を見ることになる。
その悲劇をなんとか回避しようバーダックは孤軍奮闘。タイトルの通り、たったひとりで決戦を挑むというストーリーだ。
サイヤ人を描いた過去のサイドストーリーとして秀逸で、在りし日の惑星ベジータの様子が描かれているのが興味深い。何より鳥山明氏がこのアニメオリジナルエピソードを絶賛し、原作漫画にもバーダックを登場させたことも忘れられない。まさに伝説となったアニオリ回である。