ザクタンクにドラッツェ、ゼーゴックも…ガンダム作品を彩った「リサイクル機体」急造品に感じる“独特のロマン”の画像
「HGUC 1/144 ドラッツェ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 状況に応じて人型にも飛行形態にもなる「可変モビルスーツ」、超巨大で圧倒的な火力を誇る「モビルアーマー」、分離・合体シークエンスに惚れ惚れする「合体メカ」など、ガンダム作品にはさまざまなロマンを感じる機体が登場する。

 そんな完成された強力な機体に魅力を感じる人は多いだろうが、中には、急場しのぎの苦肉の策として生まれた「不完全な機体」に惹かれるファンも少なからずいる。

 そこで今回は、やむを得ない理由で複数の機体を寄せ集めて急造された、いわゆる「リサイクル機体」が秘めた魅力について掘り下げていこう。

■『復讐のレクイエム』で描かれた本格的な戦闘シーンに感動……

 一年戦争時にジオン公国軍が用いた現地改修機のひとつが「ザクタンク」だ。マゼラアタックの車体部である「マゼラベース」に、モビルスーツ「ザクII」の上半身を載せた再利用機の代表格である。

 もともと雑誌『コミックボンボン』(講談社)のプラモ改造企画から生まれた機体で、MSVに採用されてガンプラ化もされている。

 アニメでは『機動戦士Zガンダム』第14話にて、一年戦争後に連邦が接収したザクタンクが登場。OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では、上半身が「ザクI」のザクタンクも描かれている。個々の戦場の状況や余っていたパーツによって、さまざまな改修バリエーションが生まれるのも、リサイクル機体の醍醐味といえるだろう。

 そして最新作『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』では、現地改修されたザクタンクの活躍シーンがしっかり描写されていた。雑誌企画から生まれた現地改修機が、令和最新のCG技術で活躍が描かれるまで登りつめた流れにもロマンを感じてしまう。

■機動力に全振りした清々しいまでのリサイクル兵器

 ザクとマゼラアタックを組み合わせて生まれたのがザクタンクなら、ザクにガトルをくっつけて生まれたのが「ドラッツェ」である。

 ガトルとは、ジオン公国軍の宇宙用戦闘爆撃機で、モビルスーツであるザクが量産される前に用いられた旧型の機体である。両軍の主力がモビルスーツに移行していったことで目立たなくなったが、それでもさまざまな戦場に投入されていた。

 そんなガトルの機動力に目をつけ、ザクIIの胴体部に推進機代わりのガトルをくっつけた簡易モビルスーツがドラッツェだ。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場し、深刻な物資不足に苦しむデラーズ・フリートが、苦肉の策で生み出した機体である。

 損傷したザクIIの胴体や腕部を再利用し、ガトルをバックパックに装着。脚部にもガトルの燃料タンクを再利用したスラスターモジュールを組み合わせた、リサイクル精神の塊のような機体だ。

 直線の機動性能だけは圧倒的だが、運動性は期待できず、急造ゆえに耐久性もないに等しい。劇中では敵機に攻撃を加えた衝撃だけで、ドラッツェが自壊するほどのもろさを見せた場面もあった。

 直線の機動性のみにかけた潔さは鋭角的なフォルムにも現れており、姿勢制御のためにポン付けされた肩部のスラスターポッドはいかにも急造機らしい無骨さを印象づける。

 そんなドラッツェを駆り、片道切符のような突撃戦に挑んだデラーズ・フリートの兵士たちの雄姿が目に焼き付いているファンも多いのではないだろうか。

 とはいえ、ドラッツェは『機動戦士ガンダムUC』でも現役で稼働している姿が描かれている。かなり無茶な改造が施された機体ではあるが、宇宙での加速だけは「リック・ドムII」並みともいわれており、尖った性能ゆえに長期運用されたのかもしれない。

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