クリリン殺害現場にスポポビッチの爆死も…『ドラゴンボール』ホラー的演出がエグかった「作中屈指の恐怖描写」の画像
『ドラゴンボール改』人造人間・セル編 第23巻 (Happinet(SB)(D)) ©バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 鳥山明さんの『ドラゴンボール』は、主人公・孫悟空に代表される個性的なキャラクターと彼らが繰り広げる壮絶なバトルが魅力だ。しかし実は、読者をゾッとさせるホラー作品さながらの恐怖描写も多く散りばめられている。鳥山さんの圧倒的な作画の凄さも相まって、トラウマになってしまった人もなかにはいるだろう。

 今回は『ドラゴンボール』作中で、ホラー的演出がエグかった恐怖描写を紹介していく。

■天下一武道会直後の朗らかムードから一転、悲鳴を聞いて駆けつけたら…

 天真爛漫な悟空少年が暴れまわる本作の初期は、ギャグ要素も多く明るい作風だ。しかし、そのなかで異質の恐怖描写だったのが、やはりクリリンの死亡シーンだろう。

 第22回天下一武道会、亀仙流同門の悟空とクリリンとはついに準決勝で対決する。「かんがえてみたら オラたちまともに戦うのははじめてだったな!」と言う悟空に、クリリンも「悟空っ!!! 手ぬきで戦ったりしやがったら オレは 一生うらむからなっ!!!」と返し、拳と拳を“ガッ”と合わせた二人は互いの健闘を祈った。試合は悟空の圧勝で終わったが、二人の友情を感じられる印象的な描写だった。

 コミックス12巻。決勝で天津飯に敗れた悟空だったが、亀仙人やヤムチャたち仲間と明るく談笑し合っていた。そして、じいちゃんの形見のドラゴンボールと如意棒を控室に置いてきてしまった悟空のため、クリリンは「おまえ くたくただろ いいや オレがとってきてやるよ」と言って、一人控室に向かう優しいクリリン。

 しかし、しばらくするとその控室から「ぎゃあ〜っ!!」と悲鳴が……。皆が急いで駆けつけると、何者かによって殺されたクリリンがいた。まさしく先ほどの悲鳴はクリリンの断末魔だったのだ。

 お祭りのような天下一武道会が終わり、天津飯やチャオズもこれから仲間になるのかなという朗らかムードから一転、悟空最大の友・クリリンがあっさりと殺されてしまうという恐怖と急展開……。当時『ジャンプ』で本作を読んでいた幼いころの筆者は、到底思考が追い付いていかなかった。

 次の話数では、怒り狂った悟空が飛び出し正体不明の敵を追跡、そして「ピッコロ大魔王編」に突入していく。それまでの武道家然とした戦いから一変、なんでもありの魔物たちとの戦いがはじまった瞬間だった。

■タマゴに抜け殻、タイムマシンで“現在”来ていた未知の生物の痕跡

 ドクター・ゲロが作り出したセル。その登場も非常に不気味なものだった。

 コミックス30巻。ゲロにより、人造人間17号と18号、さらに、未来を知っているはずのトランクスも知らない16号も目覚めてしまう。彼らは悟空を殺すため車を使って移動を開始した。

 一方、カプセルコーポレーションのブルマのもとには、トランクスが未来から乗ってきたものとは別のタイムマシンの情報が寄せられ、その調査のためブルマ、悟飯、そしてトランクスが向かった。

 機体全体が苔で覆われたそのタイムマシンは、かなり前から放置されたもののようだった。コックピットのガラス部分には高温で溶けたような大きな穴があり、シートの上にはイボイボのタマゴの殻が。ここで、トランクスが来る以前から正体不明の生物が“現在”の地球に来ていることが判明する。

 さらに上空、神様の宮殿では「ぜ…絶望的な予感がするのだ……!!」と、冷や汗をかいて怯える神様の姿があり、なにやら不穏な空気が流れはじめる。

 そして続く話数では、悟飯によって正体不明の大きな“抜け殻”も発見される。まるで昆虫の抜け殻のようで、その内部は粘液でベトベト……。トランクスもよく手を突っ込んで調べるものだと思ってしまうほど、非常に不気味な造形で描かれていた。

 その後、神様は「いまの地球に必要なのは神ではない… 強者なのだ……」と、ピッコロとの融合を決意する。それほどの恐ろしい“化物”とはどんなものなのか、読者は恐怖に煽られた。

 この時点ではまだ、セルの姿は明らかとなっていない。今回の敵は17号ら人造人間だけだと思っていたところに、古いタイムマシンに残されたタマゴや大きな抜け殻の異質さと、恐怖が増す描写が続いたのだった。

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