■必殺技の連続を耐えきった志々雄真実

 最後は、和月伸宏氏による『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』(集英社)の志々雄真実を紹介したい。志々雄は作中でも最強の敵キャラといってもいいだろう。

 その理由は、相楽佐之助、斎藤一、四乃森蒼紫、緋村剣心の布陣で挑んでも押し切られる形となってしまったからである。しかも、それぞれが必殺技を出したにもかかわらず対応されてしまったのだ。

 剣心の龍翔閃を素手で受け止め、斎藤の牙突零式をかわして反撃し、佐之助が二重の極みを食らわすと力技で返した。後から参戦した蒼紫の回天剣舞・六連も初動を止めて攻略してしまう。

 剣心は再び立ち上がり、五連撃に加えて九頭龍閃をぶつけるが、志々雄はそれでも倒れない。これはかなり衝撃的だった。

 剣心の技はひとつでも食らえば大ダメージとなり、これまでの敵キャラはそれで倒れてしまったからだ。これには剣心だけではなく読者も奥義である天翔龍閃しかないと思った。

 そして、剣心が天翔龍閃を食らわせるのに成功して、ようやく戦いが終わったかのように見えたが、それでも志々雄は倒れない。反撃する力がまだ残っていて、剣心に致命傷となる一撃を与えた。

 しかし、そこで志々雄の肉体は限界を迎え、体温の急上昇によって人体発火を起こし焼け死んだ。もし、志々雄が万全の状態だったとしたらどうなっていたのか……思わずそんなことを想像してしまった。

 

 主人公の奥の手である必殺技。作中でその強さやかっこよさが描かれていればいるほど、ボスキャラに打ち砕かれた時には絶望しかない。しかしそこからどんな展開が繰り広げられるかもまた見どころのひとつだろう。

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