『北斗の拳』ウイグル獄長が兜を身につけたワケは? 「恐怖のカサンドラ伝説」を生んだ拳王軍最強の漢のルーツを辿るの画像
「リボルテック ウイグル獄長 北斗の拳REVOLUTION Series No. 008」(海洋堂) (C)1983 Buronson&Tetsuo Hara/NSP Approved No.KA-334

週刊少年ジャンプ』(集英社)にて1983年から88年まで5年にわたって連載された『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)。同作からはアニメやゲームだけでなく、多彩なスピンオフ作品も生まれている。

 そんな『北斗の拳』という作品の魅力は、ケンシロウたち主人公陣営だけにとどまらず、彼らと敵対する悪役たちまで含めた、個性あふれるキャラクター性にも感じられるだろう。

 中でも圧倒的な存在感で絶大なインパクトを残した、ウイグル獄長の知られざる過去を今回は振り返っていこう。

■ケンシロウを追い込んだ驚異のパワー!

 一度収容されたら二度と出られない牢獄であることから、「死封の監獄島」「鬼の哭く街」の異名で恐れられたカサンドラ。ラオウに従って、カサンドラを統べていたのがウイグル獄長だ。

 ウイグル獄長はカサンドラに囚われていたトキの救出を目指すケンシロウと激突。2本の鞭を巧みに操る「泰山流双条鞭」といった攻撃だけでなく、強靭な肉体を活かした「蒙古覇極道」という豪快なタックル技でケンシロウを大いに苦しめた。

 しかし、最後は「蒙古覇極道」を受け止められたうえ、最大の武器である肩を破壊されてしまう。さらに、北斗神拳の技によって狭い墓穴に350kgの巨体を無理矢理押し込められ、ラオウ率いる拳王軍が誇る屈指の強者は善戦むなしく敗れ去った。

■ラオウとの出会いがカサンドラ伝説誕生のきっかけに

 カサンドラを脱獄しようとした男に最高の名誉を与えるとして、「わたしのブーツに口づけをするのだ…そして死ぬがよい!!」と言い放ったウイグル獄長。実は自身のボスであるラオウと出会ったときから、その傲岸な性格はまったく変わっていない。

 ラオウとウイグルの出会いは、『週刊コミックバンチ』(新潮社)にて2006年から07年に連載された『天の覇王 北斗の拳 ラオウ外伝』(作画:長田悠幸、原案:武論尊、原哲夫)に描かれている。核戦争で混乱した世界に秩序をもたらすべく、ラオウが覇者を目指していた頃の拳王軍に、敵だけでなく味方の小隊まで全滅させた驚異の新兵が出現する。その新兵こそがウイグルだった。

 味方まで殺したウイグルは反逆罪に問われてカサンドラに収容され、絞首刑、毒薬、串刺し、断頭台、火あぶりなど5回に及ぶ処刑を執行されても死ななかった。そこで当時のカサンドラの獄長だったギオンは、ラオウに助けを求めることに。一方のウイグルはラオウを目の前にしても、拳王軍の戦いを「カスとカスのつつき合い」と豪語した。

 さらに、ウイグルは「この乱世に伝説を作るまでオレは死なねえ!!」とまで言い放つ。そんなウイグルをラオウは気に入った様子で、「我を貫く直情型の馬鹿にたいした罪はない」と釈放し、思うがままに「伝説を作れ」とカサンドラの獄長の地位を与えたのである。

 豪気なウイグルと度量の大きいラオウの出会い。それこそが不落のカサンドラ伝説を生むきっかけとなったのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3