70年代、80年代の子ども向けアニメや特撮ドラマは、あらかじめ放送される話数やクール数が決まっている現在とは比較にならないほど「打ち切り」が多かった。人気作品として後世に語り継がれる『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』も、最初のテレビシリーズは打ち切りに終わっている。
打ち切りの理由は必ずしも「不人気」ばかりではない。実は多かったのがスポンサーの都合による打ち切りである。その最たる作品が、1977年に放送された子ども向け特撮番組『小さなスーパーマン ガンバロン』(以下、『ガンバロン』)である。
■フォーリーブスら人気アイドルが出演するも…石油ショックの影響が打撃に
『ガンバロン』は子どもたちが主人公に据えられ、変身ヒーローのガンバロンも頭身が低い小柄なイメージでデザインされている。視聴者である子どもたちに身近なヒーローだと強調する一方、ワルワル博士役に天本英世、ムッシュ役に黒部進がキャスティングされるなど、特撮ファンへの目配せも効いていた。
ユニークだったのは、人気アイドルがゲスト出演していたことだ。第1話にはフォーリーブス、第2話にはザ・リリーズ、第4話には三木聖子が出演している。フォーリーブスとザ・リリーズは歌を披露するだけでなく、ちゃんとストーリーに絡んで芝居も披露していた。それだけ力が入っていたということだろう。ただし、この路線はすぐに撤回された。
なお、第5話と第6話には悪の美少女アンドロイド役で子役時代の伊藤つかさが出演している。
第14話からは合体ロボットのダイバロンが登場。巨大怪物とのアクションがストーリーに盛り込まれた。シリーズ中盤までは視聴率も好調で予算も潤沢だったという。第18話から第20話にかけては、子ども向け特撮番組では異例のグアム島ロケまで行われている。
しかしこの頃、スポンサーの玩具メーカー、ブルマァクはすでに資金繰りに苦しんでいた。怪獣ブームに乗って怪獣のソフトビニール人形で業績を飛躍的に伸ばしたブルマァクだったが、70年代半ばにはブームも終息。石油ショックによる資材の高騰も追い打ちをかけた。
ブルマァクは、『ガンバロン』の放送途中の1977年10月にあえなく倒産。『ガンバロン』の予算も縮小の一途をたどっていく。日曜夕方という恵まれた放送枠も明け渡し、土曜の朝に移動(この時点で打ち切られた地方も多かった)。大人のキャストは出演しなくなり(石川進だけはストーリーを解説する本人役として出演)、ロケ地も千葉県御宿のホテルニューハワイ周辺に限定。再放送を挟みながら、なんとかオリジナルエピソードの放映を行っていたが、ついに力尽きて第32話で最終回を迎えた。完全なスポンサー都合の打ち切りである。
■ゴダイゴの素晴らしい主題歌も…「来週」が来ないまま最終回に
最終回はシリーズを通じての悪役、怪人ドワルキンが巨大化してダイバロンと対決したが、あっさり決着。御宿にガンバロン神社が建立されることになり、解説役の石川進が「また来週、面白いんだからね。観てよ!」と視聴者に呼びかけて終わる。しかし、もちろん「来週」はなかった。
スポンサーの都合で数奇な運命をたどった『ガンバロン』だが、デザインが秀逸な上、変身ヒーローが巨大ロボットで戦うという新機軸を生み出した。
またミッキー吉野の作曲で、デビュー直後のゴダイゴが演奏した主題歌と劇伴も素晴らしい。クレージーキャッツの映画で知られる古澤憲吾監督が最晩年にメガホンをとった作品でもある。
なによりガンバロンは子どもたちが共感するヒーローだった。再放送される機会は多くなかったが、DVD-BOXに続き、2021年にはBlu-rayも発売されているので、興味を持った方はぜひ見てもらいたい作品だ。