■遊びごたえが増した…ジムリーダーや四天王の強化
序盤は難易度の緩和が目立つ『ピカチュウ』版だが、終盤のバトルはむしろ『赤・緑』より厳しくなっていく。
まず、ジムリーダーは『赤・緑』と比べてレベルが5〜10ほど上がり、強敵感がぐっと増した。セキチクジムのキョウに至っては、こちらのポケモンがレベル30台の時期にレベル50のモルフォンを出してくるのだからすごい。「挑む順番間違えたっけ?」と驚いた人もいただろう。
最後に挑む四天王はレベルこそ変わっていないが、ポケモンの技構成が大幅に強化された。キクコのゲンガーが「さいみんじゅつ」で眠らせてから「ゆめくい」で攻めるコンボを使ったり、ワタルのカイリューが「ふぶき」「だいもんじ」といった大技を駆使したり、四天王にふさわしいポケモンになっていたのが印象深い。
このように『ピカチュウ』版では後半の敵が強くなっているものの、むしろこれが面白かったのが本作のすごいところだ。
『赤・緑』では手持ちポケモンの育成が進んで一通り相手の弱点を突けるようになると、ゲームが一気に簡単になった。ひとつのタイプしか使わないジムリーダーは、有利なポケモンを1匹用意すれば事足りる。CPUの思考ルーチンのせいで相手が無意味な行動をとることも多く、興覚めする展開も正直少なくなかった。
『ピカチュウ』版ではそういった戦闘をうまく調整し、強敵と戦っている楽しさを味わいやすい。『赤・緑』の反省を強く反映した良改変だと思う。
ゲームバランスやユーザーの要望を見直して遊びやすくなった本作からは「アニメ再現だけでは終わらないぞ」という制作スタッフの声が聞こえるようだ。もちろん、初代ポケモンの代名詞となったバグ技も使えなくなっている。
ストーリーやシステムは『赤・緑』とほぼ同じなのに、それでもやりこまずにはいられなかった。そんな『ピカチュウ』版は、理想のマイナーチェンジ作品といえるだろう。