■アルレッキーノとパンタローネ悲願の成就
作中で最初に憎むべき強敵として現れたのが、「最古の四人」だった。中でもアルレッキーノとパンタローネは別格の強さを持っていて、鳴海も苦しめられることになる。
そんな敵として登場したふたりだったが、彼らの目的はずっと変わらない……。フランシーヌ人形を笑わせる。そのためだけに多くの人間を殺すこともしてきた。
しかし、フェイスレスとの戦いになった時、目的を失いかけていたふたりの前にエレオノールが現れる。フランシーヌと瓜二つのエレオノールを見て、彼らの前に再び忠誠心が湧き上がってきた。
そこから自分たちに命令をしてほしいと話し、エレオノールに「戦って、勝ちなさい。そして…かならず戻って来なさい!」と命じられると、これまでにない喜びと使命感を持って「最後の四人」と戦うのだった。
しかし、最後の四人の能力は凄まじく、ふたりは再起不能へと追い込まれてしまう。すっかり力尽き、もうじき動けなくなる……そんな状態でも命令を守り、エレオノールのもとへ必死で戻ったアルレッキーノは、そこで彼女が鳴海に向けた幸せそうな満面の笑顔を見た。
その瞬間、彼らの長きにわたる悲願が成就する。アルレッキーノはパンタローネに「フランシーヌ様が笑っていらっしゃるぞ!」と話しかけ、すでに動かなくなっていたパンタローネも笑顔で答えていた。
もともと最悪の敵として憎んでいたはずなのに、それすら忘れてしまうほど心が通ったのを感じられた、素晴らしいシーンである。
■鳴海とエレオノールがついに結ばれる
鳴海はエレオノールに対して複雑な気持ちを抱いていた。エレオノールは憎むべき存在で、絶対に心を許してはいけない……。そんな気持ちをずっと持っていたからだ。
しかし、それでも本当の気持ちは隠せなかった。エレオノールとの共闘のすえにハーレクインを倒した時、鳴海のこれまでの感情が爆発してしまう。「しろがね、おまえを愛していた。」――押し殺していた言葉をようやく伝えられたのだ。
これまで何度も気持ちのすれ違いが続いていて、ふたりは結ばれないのかもしれない……。そう思っていたからこそ、この瞬間には感動してしまった。
このシーンで描かれた、エレオノールがこれまでに見せたことのないほどの輝く笑顔が素敵で、多くの苦悩から解放された感じだ。
ここに至るまでにギイやアルレッキーノたちが自らを犠牲にしたことも思い出され、余計にしみじみとしてしまう、感慨深いシーンだった。
『からくりサーカス』は18年前に連載終了した作品だが、印象に残る感動の名場面が数多くある。今回紹介したもの以外にもたくさんあるので、読んだことのない人にはぜひ一度手にとっていただきたい。