『北斗の拳』ケンシロウもまんまとダマされた…「アミバは本当に天才だったのか?」稀代の外道が秘めたポテンシャルとはの画像
画像はゼノンコミックス『北斗の拳外伝 天才アミバの異世界覇王伝説』第1巻(コアコミックス)

 1983年から1988年にかけて、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)。この作品には北斗神拳伝承者のケンシロウをはじめとする数々の拳法家が登場した。

 そのなかに、「アミバ」という人物がいたことをみなさんは覚えているだろうか。己を「天才」だと自画自賛し、非人道的な実験を繰り返していた外道である。

 そんなアミバは、自分で言っていたように本当に天才だったのか。その部分に焦点をあてながら、あらためて彼の行動を振り返ってみたい。

■北斗神拳の長き歴史に挑んだ秘孔の技術!

 アミバが登場したのは、ケンシロウが北斗神拳伝承者の座を争った「北斗四兄弟」の三男ジャギとの激闘を制した直後だった。この頃、「北斗四兄弟」の次男であり、四兄弟の末弟・ケンシロウも尊敬するトキが、今は非道な人体実験を繰り返す殺人鬼になり果てたという噂が流れる。実はこのトキの正体こそがアミバだったのだ。

 アミバがトキになりきる際に重要だったのが、北斗神拳に伝わる秘孔を突く技術だ。もともとアミバは切り裂く技で相手を外部から傷つける南斗聖拳を学んでいた。それにもかかわらず、相手を内部から破壊する北斗神拳の秘孔の技を身につけている。

 のちにアミバは「北斗四兄弟」の長男ラオウの部下になっているため、ラオウから秘孔の知識を受け継いだ可能性もあるが、最初は独学で秘孔の技術を習得したと思われる。

 ケンシロウが、アミバ扮するトキの噂を耳にした頃、アミバは木人形(デク)と称した人間を相手に、秘孔の究明にいそしんでいた。その結果、木人形狩り隊に所属する部下「ギュウキ」の筋力を数倍にアップさせ、同じく木人形狩り隊の一員だった「ハブ」の跳躍力を常人の数倍に上昇させている。

 さらに、アミバは新たな秘孔の発見にも成功。血管を破るほどに心臓の運動を促進させる「激振孔」を見つけだし、秘孔封じの奥義を身につけたケンシロウでさえ、この「激振孔」を破ることはできなかった。

 さらに、「アミバ流北斗神拳」と名づけた新秘孔による技で自らの肉体を巨大化。この技はケンシロウに敗れてしまったものの、1800年(一説には2000年)ともいわれる歴史を誇る北斗神拳でさえ発見できなかった秘孔を独自に発見したことは称賛に値するだろう。

■ケンシロウの目でも見破れなかった神業の模倣!

 アミバがケンシロウと対峙したとき、ケンシロウは彼がトキ本人だと信じて疑わなかった。それもそのはず、アミバは顔をトキそっくりに変えていたからだ。

 アミバは頭の骨格こそトキに似ているものの、イケメンであるトキとは違って目は落ちくぼみ、どこか陰湿な印象があった。しかし、ケンシロウと会ったときのアミバは顔をいじっており、「陰険さをまとったトキ」といった風貌に変身。ケンシロウは極悪人と化したトキの変化に悲しむだけで、アミバの正体を見抜けなかった。

 さらにアミバは、トキの背中の傷まで模倣。この傷は、もともと修業中のケンシロウを助けるためにトキが負ったもので、背中の傷までしっかりとまねたことでケンシロウは完全にだまされてしまった。ケンシロウがその正体に気づくのは、アミバと同門で南斗水鳥拳の伝承者であるレイの指摘を受けたときだ。

 ここまで完璧にトキになりきったアミバは、「世紀末モノマネ覇者」の称号がふさわしい存在ではないかと思う。

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