■父親の敵討ちとなった「蝋人形城殺人事件」

 続いては、亡き明智の父親が追っていた3億円事件に関係する「蝋人形城殺人事件」だ。ミステリーナイトに参加した明智の目的は、父親が解決できなかった3億円事件の犯人を探すことだった。

 そんななか、日本語をカタコトでしか話せないといっていたリチャード・アンダーソンを疑った明智は、早々に“徘徊”や“施錠”といった難しい日本語をさりげなく会話に入れ、探りを入れている。

 ほかにもミステリーナイトの余興としておこなわれたゲームでは、すぐに犯人役が一だと見抜いてしまうところも流石であり、相変わらず要所で推理力の高さを披露していた。

 本エピソードでは「Mr.レッドラム」という犯人により、連続殺人事件が引き起こされるのだが、その途中、煙突を通り明智が犯行をおこなったのではないかと疑われる事態も起きてしまう。それを調べたエドワード・コロンボ(刑事コロンボの甥)の頭についた蜘蛛の巣を見て安心した様子を見せる一。もし、明智が一度煙突を通っていたら、コロンボの頭に蜘蛛の巣はつかないからだ。

 無事、明智の無実を晴らした一だったが、ずっと黙っていた明智に対し、「あんただって一目みてそのことに気づいていたくせに…」と伝えている。この事件でも高いレベルで二人はどこか通じ合っていた。

 そして、この事件が解決に導かれるのと同時に3億円事件の真相も暴かれた。エピソードの最後、亡き父の遺影を前に1人でワインを開ける明智が印象的であった。

■明智の活躍が光った「獄門塾殺人事件」

 最後は、一と明智にとって宿敵と呼べる“地獄の傀儡師”こと高遠遙一が関係した「獄門塾殺人事件」での活躍を紹介したい。

 高遠が犯行予告をしていたこの事件は、一と明智が手を組み、事件を解決へと導いていく見ごたえのある内容となっている。明智は情報収集のため塾講師に、対して一は塾生になりすまし、スパルタ学習塾「獄門塾」の合宿授業へと潜入。秀才で家庭教師の経験がある明智だからこそできる芸当だった。

 2つの合宿所に分かれて情報を共有し合う2人。明智は塾講師として授業をしながらも、講師や生徒の些細な違和感を見逃さない。高校生である犯人の嘘にいちはやく気づき、高遠の危うさをその人物に伝えるなど活躍を見せた。

 かなり序盤の段階で犯人を追い詰める様子は見応え十分で、明智の洞察力にあらためて驚かされた次第だ。

 

 明智健悟は、一と対照的な存在だから面白い。優秀で完璧、付け入る隙がまるでないが、良い意味でそれを一が崩してくれるから良い関係だといえるだろう。

 現在は『コミックDAYS』(講談社)にて、『金田一37歳の事件簿』が連載中だ。本作でも明智は登場しており、一との絡みも見どころ満載だ。ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがだろう。

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