■殴り合うことが挨拶…!?「怒髪星」
コミックス5巻「怒髪星」で、真っ赤に燃えているような「怒髪帝国」という星に降りた鉄郎とメーテル。
鉄郎が通りを歩いていると、突然通行人に絡まれて殴られてしまう。その後も飲食店に入ったところ喧嘩に巻き込まれて殴られたり、マントを奪われたりする。この星は喧嘩すること自体が文化であり、挨拶代わりのようなものなのだ。
しかし、喧嘩が終わった住民たちは肩を組み合い「来週またやろう」と仲直りしている。またメーテルの服を奪うため襲い掛かってきた女性も、メーテルの強さを知ると「私の負けよ、これは返すわ。相手が悪かったみたい」と、素直に反省するのであった。
999号で星を発つ際に「なんだか底抜けに明るいねえ、悩みなんかないみたいだ」「陰にこもってウジウジしなくてもいい星だろうね、怒りたい時怒れる 自由の星……」と、鉄郎は見方を変えている。
殴り合う文化は到底容認できないが、相手に言いたいことを言って自由にふるまえるのは少々羨ましい。とくに日本人は喜怒哀楽を表現するのが苦手で、うちにこもる傾向があると言われている。しかも近年ではSNSの発展により、生じたフラストレーションを匿名でぶつけるといった新たな問題も生じている。
それならばこの「怒髪星」のように、ときには相手に思い切り意見をぶつけ豪快に喧嘩をするのも良いかもしれない?
選挙でリンチする人間を選んだり、毎日のようにお葬式をしたり。『銀河鉄道999』に登場する星にはとんでもない文化や風習がある。
ただ、その裏には、深い教訓やメッセージが込められているように思えてならない。『銀河鉄道999』の旅で描かれる多様な星の文化は、我々が持つ常識に新たな視点を与えてくれるのだ。